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 奈良県五條市で養鶏場を営む姉妹がクラウドファンディング(CF)に挑戦している。市内で発生した鳥インフルエンザの影響で、出荷できず余った卵を買ってもらう代わりに、売り上げの一部を近隣の養鶏農家に寄付する。父の死後、姉妹を支えた地域の同業者を支えたいとの思いからだ。

 CFを始めた「さかもと養鶏」(五條市中之町)は、姉の阪本雅さん(31)が主に販売を、妹・未優さん(29)が鶏の飼育を担当し、2016年から姉妹で営む。臭みがなく、黄身のコクと甘みがたっぷりつまった「白鳳卵(はくほうらん)」は、16年の県鶏卵品評会で最優秀賞を獲得した。

 祖父、父と続く養鶏農家の娘として育った2人。鶏たちは毎日卵を産み、父はその世話で家にほとんどいなかった。「養鶏や農家全般は休みがなく大変というイメージだった」と雅さん。従業員が休みの正月は、決まって家族総出で集卵作業にあたった。

 高校卒業後はそれぞれ県外の大学に進学し、雅さんは愛知県で広告制作会社に勤め、未優さんは京都府で栄養士として働いた。養鶏農家に転身するきっかけは14年12月、父・光志さんに膵臓(すいぞう)がんが見つかったことだった。

 2人が養鶏場の仕事を手伝う中、15年6月に光志さんは56歳で亡くなった。光志さんが開発した「白鳳卵」の名の由来を聞く余裕もないままの別れだった。

 養鶏場を閉める考えもあったが、「父から続くいろんな人との縁を途絶えさせてもいいのか悩んだ」と未優さん。雅さんも「家族を養うためにも、続ける方がみんな幸せになれる」。

 でも、養鶏のことを何も知らない状態からやっていけるのか――。そんな2人に近隣の養鶏農家たちは「本格的に2人ががんばるなら支えるよ」「何かあったらいつでも言ってこい」。故障した機械を見てくれたり、電話をすればいつも相談に乗ってくれたりして、養鶏場経営に乗り出した2人を支えてくれた。

 今年12月に鳥インフルが発生した市内の養鶏農家の男性は、光志さんのことを「みったん」と慕い、特に2人を気にかけてくれていた一人だった。鳥インフルが発生して間もなく、未優さんへの電話で男性は「迷惑かけるわ。ごめんな」と声を震わせた。

 卵や鶏肉を食べることで、人が鳥インフルエンザに感染することはない。しかし、卵の安全性を疑う電話が地域の養鶏場に殺到したほか、出荷制限が解除されても県産の卵の仕入れをやめた問屋もあったという。

 「食品は安全と分かってもらえずに過剰な反応が生まれて、発生源の人はもっと心を苦しめている」

 さかもと養鶏は発生地から半径10キロ以内にあり、一時、鶏や卵などの出荷制限がかかった。約1万2千羽の鶏が毎日1万個近くの卵を産むため、卵は大量に余った。雅さんはCFで卵を売るだけでなく、発生源の養鶏農家や、影響を受けた農場などを支援しようと売り上げの15%を寄付することを提案した。「地域の方々に恩返しするだけでなく、全国の消費者に食品が安全なことを伝えたい」

 CFは15日に開始し、3日間で目標額の100万円が集まった。「発生地の卵は安全と伝わって、買ってみようとする人が増えれば、全国の養鶏農家を助けられる」と雅さん。現在は、30日までに250万円の支援をめざしている。未優さんは「へこたれずにがんばってるでって、支えてくれた人たちに伝えたい。父にも届くといいな」。

 CF(https://camp-fire.jp/projects/view/343177別ウインドウで開きます)は1千円から支援でき、2600円以上で白鳳卵の返礼品が届けられる。(平田瑛美)

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