聞き手・岸善樹
やば、このメール返信忘れてた……。「即レス」を心がけ、その分、相手にも「いいね!」や共感を求めてしまい、疲れていませんか。いい感じの距離感って、どんな感じなのでしょう。
インターネットのおかげで私たちはこんなにも自由になったはずなのに、なぜ追われるように「いいね!」を求めるのでしょう。精神科医の熊代亨さんは、お互いを商品のように「値踏み」する社会が、居心地の悪さを生んでいると指摘します。
拡大する熊代亨さん=東京都中央区、伊藤進之介撮影
街の精神科医として感じるのは、いまなら発達障害などと診断されるような人が、昭和の時代にはあちこちで当たり前に暮らしていた、ということです。空気が読めなかったり、気が利かなかったりしても、煙たがられながらも職場や居場所があり、病気とみなされることはまずありませんでした。
そうした人たちが早い段階からの診断と治療を通じて、適切なサポートを受けられるようになったのは良いことです。一方で、いまの社会はますます清潔で行儀良く、効率的で、コミュニケーション能力が求められるようになりました。それについて行けない人に対処する需要が高まったから、発達障害が「病気」として受け入れられたようにも感じます。
現代社会は確かに自由です。家や身分や地域によって仕事や人間関係を強制されないし、交通機関やインターネットの発達で、距離による制約も大幅に解消しました。一方で、行儀良く効率的で、コミュニケーション能力を問う社会は、そこに適応するよう、人々にハイクオリティー化を要求します。
「ちょうどいい距離感」とは。記事の後半では、文化人類学者の小川さやかさんが、レスポンスがなくてもいい国の慣習を紹介します。
そうした社会は、人と人との関…
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