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 見せましょう、野球の底力を――。東日本大震災から約3週間後の試合前に、楽天(当時)の嶋基宏選手が訴えた、あまりにも有名なフレーズだ。

 大災害や戦災の後、スポーツや芸術の底力、とりわけ人々を励まし、勇気づける力が期待されやすい。感染症に世界中が覆われた2020年も、しかり。

 美術界では、緊急事態宣言中を中心に美術館が閉館したり、海外から作品を借りてくる展覧会などが中止や延期になったり、甚大な影響があった。一方で、静かに作品を味わう美術鑑賞は感染リスクが低いとされ、宣言解除後は、事前予約制などの形で展覧会が開かれるようになった。

 閉塞(へいそく)感や不安が漂うなかで、例えば東京国立博物館「きもの KIMONO」展は、きものの名品の質感や絵画性が堪能でき、「楽しませる力」に満ちた展覧会だったといえる。

 現役でいえば今年92歳の上田薫が、神奈川県・横須賀美術館などでの個展で、一見写真のような、しかし絵画の本質をつく驚異の超絶技巧を示した。驚きの筆としては、東京ステーションギャラリー「河鍋暁斎の底力」も挙げておきたい。

 とはいえ、美術鑑賞とは本来、極めて個人的なもので、楽しみ方も個別的なものだし、作る側もまた同様だろう。そうした「個の力」を貫いた現代美術家のクリストが5月に逝った。金銭的な支援は受けずに、徹底的に「自由な個人」として、巨大な傘の群れを立てたり、歴史的建造物を布で包んだり、といった壮大なプロジェクトを残した。

 「ルポルタージュ絵画」の池田…

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