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 新型コロナウイルスの感染が拡大した北海道旭川市でクラスター(感染者集団)が発生した11月上旬、重症ではないコロナ患者の受け入れを巡り、主に重症患者の担当だった旭川医科大学病院が緊急に受け入れを検討したところ、医大の吉田晃敏学長が許可しなかったと古川博之院長が朝日新聞の取材に証言した。古川院長は「受け入れを検討したが学長の意向を受け結果として見送った」と話している。

 旭川市では11月6日、吉田病院でクラスターが発生。コロナ患者を転院させる必要が出た。そのため、旭川医大病院を含む市内5カ所の基幹病院が8日、受け入れ体制を協議した。

 5病院はもともと、コロナ患者の受け入れを症状に応じて分担しており、旭川医大は主に重症者の担当だった。ただ吉田病院の入院患者は寝たきりの高齢者らが多く、感染した患者にはコロナの症状としては重症ではなくても、転院を急がなければいけない人がいた。そのため、5病院の協議で、旭川医大でも1人を受け入れることにした。

 ところが、協議後に古川院長が吉田学長に受け入れを報告したところ、「許可しない。大学が受け入れるべき対象ではない」と言われたという。11月13日に面談した際は、「『受け入れてもいいが、その代わりお前がやめろ』と言われた」という。

 旭川医大病院は患者の受け入れ体制を整えようとしていたが、学長の方針を受け、「受け入れを見送った」という。古川院長は「納得できなかったが、現場で指揮をする私がやめるわけにはいかない。断念したくなかったが、他に選択肢がなかった」と話す。職員からは「受け入れは地域の病院としての義務なのに」といった声が出たという。

 市内の医療関係者は「医大病院が何らかの理由で吉田病院の患者を引き受けられなくなった、ということはあった」という。その後の吉田病院のクラスター拡大については「旭川医大が受け入れてくれれば状況が変わったかどうかはわからない」という。

院長「臨機応変な対応すべきだった」 コロナ対応に課題

 旭川医大病院は11月20日以降、旭川市を含む道北地域からコロナの重症患者を受け入れ、現在は中等症以上の患者も受け入れている。また、基幹病院の旭川厚生病院でのクラスター発生を受け、同院で対応できなくなった一般患者も受け入れている。

 古川院長は、今回のコロナ対応では課題が残されたとも話した。旭川市では今年初めの感染拡大を受け、基幹5病院では冬場に向けた対応を検討し、症状に合わせて各院でコロナ病床を増やすなどの対策を取っていた。ただ、徐々に患者が増えるケースを想定しており、今回のような大規模クラスター発生は「予想していなかった」という。古川院長は「臨機応変な対応をすべきだった」という。

 コロナ患者受け入れに関する発言について朝日新聞が吉田学長に確認したところ、旭川医大は「個別の質問には回答しない」とコメントした。

 吉田学長を巡っては、11月17日の学内の会議で吉田病院について「コロナを完全になくすためには、あの病院(吉田病院)が完全になくなるしかない、ということ」などと発言したとされる。「文春オンライン」が今月16日、音声データとともに発言を報じ、吉田学長は17日、自らの発言だと認めたうえで、「発言は、吉田病院の閉鎖等を望むことを意味するものではありません」「不適切な発言であったと深く反省しています」などとするコメントを出していた。(井上潜、本田大次郎)