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 愛知県の名古屋港周辺が、有毒な外来種「ヒアリ」の脅威にさらされている。大量のヒアリを産む「女王アリ」が多数見つかり、周辺地域に飛んで繁殖地を広げる恐れがあるためで、関係者は危機感を強めている。

 愛知県飛島村の名古屋港飛島埠頭(ふとう)に昨年11月25日朝、作業服とヘルメット姿の約10人が集まった。ヒアリを緊急調査する環境省や名古屋港管理組合の職員らだ。ヒアリのコロニー(集団)が見つかった場所の周辺にヒアリが好む油菓子を6メートル間隔で置き、30分後にヒアリが集まっているかどうかを調べた。この日は約3時間調査したもののヒアリは見つからなかったが、環境省中部地方環境事務所の遠藤洋一・野生生物課長補佐は「多くの女王アリが見つかったことで、これまでとはフェーズが変わったという危機感は関係機関で共有している」と話す。

 ヒアリは非常に攻撃的で、人が刺されると激しく痛み、死ぬ場合もある。原産地の南米では家畜のウシやニワトリを襲ったり、農作物を食い荒らしたりする。在来種のアリを駆逐してしまう可能性もあり、もし国内に定着すると大きな悪影響が心配されている。

 国内では2017年以来、各地の港湾などで毎年のようにヒアリが発見されている。だが名古屋港が特に問題視されているのは、多数の女王アリが見つかったためだ。

 環境省や愛知県などが昨年9月に「数百匹のヒアリが見つかった」という連絡を受けて現地調査したところ、雑草を防ぐシートの下で1千匹以上のヒアリが集まるコロニーを見つけた。毒針を持つ働きアリが多かったが、羽を持って繁殖能力がある女王アリ数十匹が含まれ、女王アリと交尾する雄アリもいた。すでに卵やサナギもあったという。名古屋港ではこれまで、コンテナ内で見つかった約1千匹のヒアリのうち1匹が女王アリだったことはあったが、数十匹の女王アリの発見は初めてだった。

 女王アリと雄アリの飛行能力は2キロほどとされる。巣から出て「結婚飛行」と呼ばれる移動をした後、新しい巣を作るという。遠藤さんは「確認できた個体はすべて駆除したが、女王アリが飛んでいって別の場所に巣をつくっている可能性は否定できない」と話す。

 環境省は少なくとも22年までの2年間は飛島埠頭周辺の調査を続ける予定。ヒアリは道路の舗装の継ぎ目や割れ目、草地などに巣をつくるといい、名古屋港の事業者らにこうした環境を敷地内に作らないよう呼びかけている。(山野拓郎)

 ヒアリ 南米原産で、毒針を持つ働きアリの体長は2・5~6ミリほど。体は赤茶色でつやがあり、腹部はやや暗めの色。触角の先端が2節だけ膨らみ、体にコブが二つあるのが特徴。刺されると焼けるような激しい痛みを感じ、かゆみやウミといった症状が出る。人によってはじんましんが出たり、呼吸困難や血圧低下、意識障害を起こしたりして、死亡する場合もある。外来生物法で特定外来生物に指定されている。

国内でヒアリが発見された主な経緯

2017年6月 国内で初確認

  17年8月 名古屋港船見埠頭のコンテナ内で約1千匹を発見。女王アリも1匹見つかる

  18年7月 成田空港に空輸された貨物からヒアリを発見

  19年9~10月 東京港青海埠頭で約50匹の女王アリを確認。3匹以上の女王アリが一度に見つかるのは初めて

  20年9月 名古屋港飛島埠頭の歩道や企業敷地内で1700匹以上を発見。女王アリ数十匹も確認。数十匹単位で女王アリが見つかるのは国内2例目