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 コロナ禍が収束しないまま迎える年末年始は、急病やけがで救急車を呼んでもすぐに治療を受けられない事態が懸念される。餅をのどにつまらせる窒息や入浴中の事故、心筋梗塞(こうそく)などは1月が最も多い。できる範囲で身を守る行動をとることが大切だ。

拡大する写真・図版東京消防庁管内で餅などによる窒息事故で救急搬送された人数(2015~19年)

 「年末年始に、いつもなら助かる命が助けられないケースが出てくるかもしれない」。救急・災害医療が専門の小倉真治・岐阜大学病院高次救命治療センター長は懸念する。

 心筋梗塞などの一刻を争う患者を救命する救命救急センターは、特に冬場が忙しい。総務省消防庁によると、2019年は救命救急センター以外も含め、1月に救急搬送された人は約58万人。月別では最多で、熱中症患者が増える8月より2万人以上多い。12月も53万人を超える。

救急患者受け入れられない例も

 その上、今年は多くの施設がコロナの重症者も受け入れている。平時なら搬送依頼を断らない医療機関でも、救急患者を受け入れられない例がすでにあるという。「いつもなら15分で着く病院の受け入れが難しくなり、45分かかる病院に運ぶことになれば救命できなくなる恐れもある」。発熱など「コロナの疑い」があれば、対応できる病院が限られ、搬送にさらに時間がかかることもある。

 東京都によると、患者の搬送先がすぐに決まらないケース(搬送時に5カ所以上の病院で受け入れを拒否されるか、20分以上受け入れ先が見つからなかった件数)は、都内の感染者が急増する前の3月上旬は1日平均30件に満たないが、12月27日時点では60件近い。

 多くの医療機関が休む年末年始には救急部門に患者が集中し、救急現場がさらに逼迫(ひっぱく)するとみられる。救急要請の急増によって、119番通報しても救急車がすぐに来ない恐れもある。

 日本医科大病院救命救急科の五十嵐豊・病院講師も「冬場は感染症や脳卒中、心筋梗塞といった命に関わる患者が多い。新型コロナ以外の重症者の治療や回復にも影響する可能性がある」と言う。

拡大する写真・図版餅がのどに詰まったら

 潜むリスクの一つが、餅でのどを詰まらせる事故だ。東京消防庁によると餅などによる窒息事故で過去5年間に計463人が救急搬送されたが、1月だけで177人と4割近くを占める。全体の約9割は65歳以上だ。同庁は、餅は小さく切る▽ゆっくりかんでのみ込む、など事故を防ぐポイントを挙げ、動画投稿サイト「YouTube」の同庁公式アカウント(https://www.youtube.com/channel/UCWRcJ3aBe2n6SI0Jlt66jKA別ウインドウで開きます)で「背部叩打(こうだ)法」などの応急手当てを紹介する。

 五十嵐さんは「高齢や脳梗塞になったことがあるなど、のみ込みに不安がある人は餅を控えた方がいい。お酒を飲みながら食べると詰まりやすくなる恐れもある」とアドバイスする。

入浴中に亡くなる人、1月が最多

 入浴中の事故にも注意したい。都監察医務院によると、1月は入浴中に亡くなる人が最も多く、19年は都23区で301人。気温の低さが関係しているとみられ、特に高齢者らのリスクが高いとされる。日本列島は30日ごろから強い寒気に見舞われる予報だ。都健康長寿医療センター研究所はホームページで「36度前後である人間の体温からかけ離れた温度環境で入浴しない」よう呼びかけ、「脱衣室や浴室の温度を上げ、湯温を41度未満にする」ことなどを対策に挙げる。

 積雪による転倒にも注意が必要だ。東京消防庁によると、過去5年間の12~3月に積雪や凍結路面が関係する事故で1250人が救急搬送された。うち1183人が転倒によるけがで、36%は入院している。年代別では60代が最多。同庁は、滑りにくい靴を選び、余裕を持って行動するよう呼びかける。

 そして、小倉さんも五十嵐さんも、新型コロナに感染しないよう、基本的な感染対策の徹底を訴える。(阿部彰芳、野口憲太)