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立ち往生した車いす 助けてくれた小1の男の子を探した

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佐藤純
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 東京都八王子市の榊山美賛(みさ)さん(45)は今年初め、交通事故に遭い、車いす生活になった。不慣れな車いすで初めて外出し、動けなくなった。通りかかった小学生たちが助けてくれたが、そのまま立ち去った。年の瀬の今月、榊山さんは子どもたちと再会し、感謝の気持ちを伝えた。

 理学療法士として働いていた榊山さんは1月、仕事帰りに世田谷区内で車にはねられた。腰などを打ち、激しい頭痛やめまい、手足のしびれなどに悩まされた。脊髄(せきずい)などを覆う膜が破れて髄液が漏れ出す病気、「脳脊髄液減少症」と9月に診断されたという。

 歩くことが難しくなり、10月末から車いすを使い始めた。利き手の右手は使えない。両足でペダルをこぎ、左手でハンドルとブレーキを操作する。

 初めて一人で外出した11月2日、インフルエンザの予防接種を予約するため、八王子市内の京王線京王堀之内駅前にある診療所前にたどりついた時、一人の小学生が「これって三輪車?」と話しかけてきた。「どうして乗ってるの?」「どうやって動かすの?」。初対面なのに自然に接してくれたことがうれしくて、数分間、言葉を交わした。

 話し終えて狭いスロープを上ろうとしたところ、不慣れな車いすで疲れたのか、動けなくなった。すると、「やってあげるよ」という声が聞こえ、スロープの上まで後ろから押してくれた。首を自由に動かせなかったが、子どもたち数人が押してくれていることが気配でわかった。

 「ほんと助かった。ありがとう」

 「よかった。気をつけてね」

 名前を聞く間もなく、お礼だけ言って別れた。みんな黄色い帽子をかぶり、ランドセルに黄色いカバーをしていた。近くの市立秋葉台小の1年生らしかった。

思い切って電話

 その後、車いすで外出した時、電車で近くに乗り合わせた人たちの配慮のなさや、街ですれ違う人の好奇のまなざしを感じた。つらい目に遭うたびに、車いすを押してくれた子どもたちのことを思い出し、「ここでめげていられない」と気を取り直したという。きちんと感謝を伝えたいという思いが募り、12月初めに思い切って秋葉台小に電話してみた。

 学校側が、当日居合わせた子どもたちを確かめてくれた。22日、榊山さんは学校に出向き、車いすを押してくれた津田匠君(6)、高橋新(あらた)君(7)、長谷川翔龍(かいり)君(7)、能生(のうしょう)悠平君(7)の4人と再会した。

 「みんなが声をかけてくれたり、車いすを押してくれたりしたことが本当にうれしくて、ちゃんとお礼をしたいと思ってうかがいました。あの日は本当にありがとうございました」

■洞察力に驚いた…

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