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 【静岡】地域ぐるみで「伴走型」の就労支援に取り組んできた沼津市自立相談支援センターに、新型コロナウイルスの影響で困窮する人々の相談が殺到している。4月~12月の相談件数は例年の3倍の950件。何が起きていたのか、センター長の大塚昌己さんに聞いた。

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 センターは発足5年目。今年4月、2年ぶりにNPO法人「青少年就労支援ネットワーク静岡」が運営を受託した。

 4月の相談件数は約100件。コロナで職場から自宅待機を言い渡された非正規で働くシングルマザーや外国人が「緊急事態宣言が出たら、仕事はどうなるのか」「お金がない」「食べ物がない」と押し寄せた。

 5月の相談件数は180件を超え、家賃や食料支援の相談が大半を占めた。企業や農家、寺などから寄贈された食料を配った。

 このころ、事務所前には毎朝、20~30人ほどの外国人が待っていた。「特別定額給付金」や「緊急小口資金」の申請書類の書き方がわからないという。コロナによる人員整理なのに、会社が発行した離職票に「自己都合」とされていたケースもあった。

 6月下旬には高齢者の相談が激増。年金に加えアルバイトや再雇用で働いていた人たちが失業していた。今まで通りの家賃は払えないが、「住宅確保給付金」も受けられない。受給要件に「就職活動をしていること」とあるからだ。

 80代の男性は健康に自信があり、経験を生かせば仕事はみつかると思っていた。ところが、しだいにうつむくことが増え、言葉も弱気になった。「年齢だけで門前払いされる」

 ひとり親家庭には世帯収入が基準額を超え、給付金がもらえない人が多かった。児童扶養手当など公的給付も収入に加算されるからだ。母子家庭の場合、少しでもセキュリティーがしっかりした家を選びたい。多くの母親が仕事を掛け持ちして家賃を捻出していたが、飲食店を中心に夜のシフトがなくなったという。

 家賃の安い家に住み替えようにも引っ越し費用がない。スタッフが手伝い、数人が居を移した。引っ越せず、家賃が滞った人の中には自己破産した人もいた。

 10月ごろから、食料支援の「第2波」が来た。ガスと電気を止められた人も目立った。支援する食料をカップ麺やレトルト食品に切り替え、湯を持ち帰れるようポットの貸し出しも始めた。

 そして年末、子どもの学費のための貯金を取り崩し、家賃にあててきた母子世帯が切迫した状況にあるという。「食料は支援できるけれど、寒空に住居を失うおそれと背中合わせです」。ボランティアサポーターの小和田尚子さんは言う。

 12月半ばの夕方、フィリピン人の30代女性が、ダウン症の9歳の娘を連れてセンターを訪ねてきた。「上着がない。寒いです」。職員は子ども用の赤いコートと毛布、食料を渡した。さらに次の支援につなげるため、小和田さんは「今度、ひとり親の会においで」と声をかけ、英語のカードを渡した。

 沼津市では市と自立相談支援センター、社会福祉協議会、ハローワークが連携し、知恵を絞る。大塚さんは「困った人をどこかで拾い上げる。それぞれの役割や持ち味を生かしながら連携して困りごとに一緒に向き合っている」と話す。

 コロナ禍は経済基盤が弱い層により厳しい。「生活費がない」との訴えの裏で複雑にからまった「困難」の糸をほぐすため、センターでは今日も「どうしました?」と相談に耳を傾けている。(阿久沢悦子)

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 「沼津のくらしを守る市民連帯」は31日と1月2日の午前10時~午後2時、沼津市米山町の米山町クリニック駐車場で「年末年始のお困りごと相談会」を開く。食料や防寒具の配布、看護師による健康相談も行う。電話は090・8188・2761または090・2689・2555

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