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 今年6月、滋賀県立近代美術館がリニューアルオープンします。2022年早春には30年超の構想・準備期間を経た大阪中之島美術館もいよいよ開館。1日付で滋賀近美のディレクター(館長)に就任した元東京国立近代美術館主任研究員の保坂健二朗さんと、中之島美館長の菅谷(すがや)富夫さんに、これからの美術と美術館について、オンラインで語ってもらいました。

 ――保坂さんは今年45歳。異例の若さでの就任です

 保坂 アーツ前橋の住友文彦さんや十和田市現代美術館の鷲田めるろさんも40代で館長になりました。諸外国では30代で就いている人もいます。僕自身に能力があるかは別として、美術館の館長はもっと若い人がいいと常々思っていた。僕は滋賀県で、2011年から「美の滋賀」という県の文化施策の委員を務めていて、県職員と気心が知れている気安さもあります。

 前の職場の東京国立近代美術館には20年弱いて、違う所で働いてみたいという思いもありました。就任にあたっては館長というよりディレクターであるという意識をもって、美術館のディレクションやマネジメントを考えたいと言った。今後の活動に照らして、館名に「近代」を冠することがふさわしいかも検討していきます。コロナ禍の難しいタイミングでの再開館ですが、新しい美術館像が問われている時期でもあり、いい時に着任できたなと思っています。

 菅谷 私は1992年に大阪市立近代美術館建設準備室に入りました。その前は滋賀県立陶芸の森にいて、滋賀近美にも84年の開館直後から出入りしていましたが、当時から県全体で美術館、特に滋賀近美を大切にしている感じがした。今は学芸のスタッフもほぼ入れ替わっていますよね。

 保坂 定年や早期退職の方がいたりして、平均年齢が40歳を切ろうかという状況です。ただ、今の滋賀近美は若いスタッフのほとんどが休館中に入ったので美術館の実態を体で感じられていない。でも、昨年、西宮市大谷記念美術館で数多くの展覧会を企画されてきた池上司さんが学芸課長に就かれたことで、兄貴分としていろいろ教えてもらっています。

 ――両館とも近現代美術のコレクションが特徴的です

 保坂 うちは版画や写真をあまり体系的に集めていないこともあって、コレクション全体の点数は県立美術館の中でも少ない方ですが、滋賀ゆかりの小倉遊亀さんは60件もある。また、志村ふくみさんや清水卯一さんが約170件もあるように工芸を手厚く持っていますし、2018年からはアール・ブリュットの収蔵も始めています。このあたりが、今後コレクションを使ってどうアートを見せていくかを考えていく上でポイントだと考えています。

 戦後アメリカ美術も、マーク・ロスコやモーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、クリフォード・スティルなど国内随一のものがあるけれど、今挙げた作家って全員男性。抽象表現主義ではある意味、女性の作家が差別されてきたというか、非常にマッチョな時代だった。志村さんや小倉さんなど女性も持っている一方、抽象表現主義は男性作家中心のままになってしまっている。

 また、コレクションを形成した80年代当時、「戦後の世界の美術」イコール、欧米、特にアメリカ美術という意識があったと思う。再開館するにあたって、そこをきちんと検証していく必要がある。購入予算がほとんどない中では難しいけれど、今後はコレクションの中でアメリカの戦後美術を相対化し、多様なあり方を伝えていくことが必要だと考えています。

 菅谷 女性への視点と欧米中心のコレクションは、コレクションだけの問題ではなく展覧会を含めて、これからの美術館は考えないわけにはいかない。うちの準備室もここ数年は少し予算がついたので購入を再開し、意識的にアジアの作家を収集しています。

 一方、すごく値段の上がってしまった中国の現代絵画を、少ない予算を使って後追いで買うのは現実的な集め方ではない。今は2000年代以降のタイやシンガポールなどの作家のビデオ作品を少しずつ入れています。女性に関しては、これまでも大阪の戦前の女性作家に焦点をあてて収集や展覧会をしていて、それなりに目配りしてきたと思っています。

 ――あいちトリエンナーレ2019では参加作家の男女比を半々にしたことが話題になった一方、企画展が批判を浴びて中止に。公立美術館のトップとして、表現の自由についてどう考えますか

 菅谷 表現の自由を証明するた…

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