中沢滋人
拡大する十勝品質事業協同組合の共同熟成庫で熟成中の「十勝ラクレット モールウォッシュ」=2020年12月3日、北海道音更町
名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」で、おじいさんが串の先に刺して、暖炉の火にかざし、とろりと溶けたところをパンにのせて食べる。
そのチーズが北海道・十勝地方の温泉街で独自の発展をみせている。いったいどんな――。
琥珀(こはく)色の「モール温泉」で知られる音更(おとふけ)町の十勝川温泉。老舗旅館「観月苑(かんげつえん)」では、夕食バイキングで「十勝ラクレット モールウォッシュ」を使った料理が好評だ。
小さな卓上コンロに火をかけ、ジャガイモやブロッコリー、パンの上にラクレットをのせて陶板焼きにし、とろりと溶けたところをいただく。
「ラクレット」とは「削るもの」という意味。スイス特産のセミハード系チーズだ。
拡大する観月苑の夕食バイキングで人気の「十勝ラクレット モールウォッシュ」を使った陶板焼き=2020年12月9日、北海道音更町
観月苑ではかねて、スイススタイルでお盆ほどの大きさの丸いチーズを半月状に切り、切断面をオーブンに当て、溶けた部分を削るようにして皿のジャガイモなどにかけて客を楽しませていた。そこへコロナ禍が見舞った。対面提供が難しくなり、一人ひとりに陶板焼きを出すのを思いついた。
コロナ休業から営業再開した6月から提供すると、7割の客が選ぶ品になった。副支配人の束原(つかはら)成さんは話す。
「『これはおいしい』とお褒めの言葉をいただき、ほっとしています。土地ならではの食材で、しかも、モールウォッシュは品質がだんぜんいい。1年ほど前に、別の商品からこれに変えました」
「十勝ラクレット モールウォッシュ」は、十勝のチーズ工房や地元企業有志でつくる「十勝品質事業協同組合」がブランド化した。
それぞれの工房が、原料から製造過程まで定められた統一レシピを守って作ったチーズを、十勝川温泉近くの共同熟成庫に持ち寄る。2人の「チーズ熟成士」が、厳正な温度管理のもと、1~2日ごとに1個ずつ表面をモール温泉水で丁寧に磨き上げる。
「モールウォッシュ」のゆえんだ。そして、3カ月ほど熟成させる。
ラクレットは熟成させる際に、表面のリネンス菌を活性化させるため、アルカリ成分を持つアナトー色素を入れた塩水で磨くのが一般的だ。その菌により表皮が作られ、熟成させることで、独特の風味が生まれる。モールウォッシュは、同じくアルカリ性の十勝川温泉の温泉水に着目した。
モールとは太古の植物由来の亜…
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朝日新聞社会部