家族と迎えられぬ最期 「なぜ私がここに」看護師の自問
「私なんかじゃなくて、家族と一緒に最期を迎えたいはずなのに。切ない」
静岡県内で新型コロナウイルス患者を受け入れる病院の看護師の20代女性は、患者をみとる時の心境を声を詰まらせながら語った。
12月からコロナ病棟で勤務する。働き始めて1週間ほどで3人が亡くなった。症状の悪化が速く、朝食をとれていた人が夜に絶命したこともあった。機械で酸素を送り込んでも、ウイルスに感染した肺は機能が低下して酸素を取り込めなくなる。息ができずに苦しむ患者には、モルヒネを投与するという。
感染者が入院する病棟のレッドゾーン(汚染エリア)に患者家族は立ち入りできず、臨終の際にロビーからiPadのビデオ通話で必死に呼びかける。だが、そばにいるのは防護服姿の医師や自分たち看護師のみ。息を引き取る瞬間、心の中でこう自問する。「なぜ、家族ではなくて私がここにいるの?」
コロナ病棟を希望したわけではない。幼い子供がいる同僚は断った。この看護師は独身で、上司から面談で「お願いします」と頼まれた。「私が拒否したら、困る人がいるかもしれない」と引き受けた。
離れて暮らす母親はコロナ病棟勤務が決まると、「あなたを誇りに思うけれど、どうか感染しないで。自分を大事にして」と言った。「戦場に行くような気持ちになった」。看護師はそう振り返った。
コロナ病棟の看護師たちは、身も心もすり減らしながら入院中の患者らを見守っている。「私たちの姿を知って欲しい」。看護師たちが重い口を開いた。(小林太一)
「ちょっと待ってよ」 飲み込んだ言葉
「どんちゃん騒ぎして飲み会したんや。あれが原因やったわ」
国立病院機構近畿中央呼吸器センター(堺市北区)に入院した新型コロナウイルス患者が発した一言に、防護服を着て医師とともに治療を担う看護師はぐっと言葉をのみ込んだ――。
同センターの看護師長(49…
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