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 約700年の歴史をもつ福岡市の伝統工芸品、博多鋏(ばさみ)。その技をたった一人で守ってきた高柳晴一さんが11月、がんで他界した。70歳だった。「次の代に技を残したい」。願いは一筋、ぐるりと回り道をして、ある女性につながった。

 博多鋏は刀造りと同じ技法を使う。地金に鋼を付け、何度もたたいて研ぎ、焼きを入れる。かつては20軒もの工房があったが、ここ30年は刀鍛冶(かたなかじ)の血を引く高柳さん一人だった。

 その工房に10年前、弟子になりたいという女性(50)が訪ねてきた。断ってもあきらめず、デパートの社員を辞め、ほぼ毎日やってきた。頑固なところが自分に似ていた。

 技を次の代につなげられるかもしれない――。高柳さんは女性に工房の道具や材料を使うことを許した。鍛冶や研ぐコツを惜しげもなく教えた。女性は真剣に一つずつ吸収した。

 高柳さんの博多鋏は美しく、3代にわたって切れ味を保つ。1本8千円でも注文が絶えない。本来は朝から晩まで10年以上修業してやっと身につく技だ。女性はバイトとかけもちで、期待ほどには上達しなかった。高柳さんは次第に女性の行く末が心配になった。

弟子を突き放した直後、動かなくなった右腕

 5年経ったある日、女性の打った鋏を手に「5年でこれよ。もうあきらめり」と告げた。「5年が無駄になる」と泣く女性を、「今なら5年で済む」と突き放した。女性は鍛冶職人への支援制度がある他県の修業先を探し、去っていった。

 まもなく高柳さんの体に異変が…

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