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 今年、自筆の遺言書を法務局へ預けられる新制度が始まった。自宅で保管するのと比べ、紛失や改ざんの心配が少ない。ステイホームの年末年始、「遺言」について考えてみませんか?(西晃奈)

 遺言は、本人が書く「自筆証書」と、法律の専門家の公証人が作って公証役場で保管する「公正証書」の主に二つがある。

 公正証書は専門家が作るので、内容の不備で無効になる心配がない。役場で保管するので改ざんの恐れもない。一方、戸籍謄本などを集める手間がかかり、遺産額によって数万~数十万円の手数料がかかる。

 自筆は自分だけで誰にも知られず作れる手軽さがある。費用もかからない。だが、内容に不備があれば無効になる。遺族が見つけられない恐れもある。家庭裁判所で相続人らが立ち会って内容を確認する「検認」という手続きも必要だ。

 自筆のメリットを損ねずに問題点を解消するためにできたのが、「自筆証書遺言書保管制度」だ。今年7月から1件3900円の手数料で全国の法務局が預かる。未封の遺言書や申請書(法務省のサイト〈http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html別ウインドウで開きます〉からダウンロード可)を準備し、本人が法務局で手続きする。

 自宅で紛失する恐れがなくなり、検認も不要。手続き時に職員が日付や押印の有無などをチェックするため、遺言が無効となる可能性も減る。ただ、内容の相談はできない。

 家庭裁判所に申し立てられた遺産分割の調停や審判は年々増えている。最高裁判所によると、2000年に全国で約9千件、広島で236件だったが、19年は全国で約1万3千件、広島では314件だった。遺族間の話し合いで終わらない場合は裁判までもつれることもある。広島法務局の担当者は「自筆なら何度でも書き直せる。書けるうちに前もって書いておくと安心です」と話す。

 法務局での手続きには予約が必要。広島法務局の窓口か、電話(082・228・5201)、専用サイト(https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/別ウインドウで開きます)から予約できる。

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 「手数料が安かった」「遺書の内容を他の人に聞かれることがない」「自分が死んだら相続人に通知してくれる」。広島法務局によると、11月末までに239件の申請があり、制度を選んだ理由をこう答えたという。60歳以上が8割を占めたが、中には30代もいたという。法律では15歳以上で遺言を残せる。

 司法書士の高木雄司さん(58)は同局で2番目にこの制度に申請した。顧客から相談を受けたときのことを考え、「まずは自分でやってみよう」と決めた。

 制度の長所を「作成段階のハードルが低く、遺言書を残せたという満足感は生まれた。紛失や改ざんの恐れがないことは今までと違う大きなメリット」と評価する。一方で「一般の方だと、何をそろえるかなど、知識がないと少し難しいかも」という。また、公正証書遺言の方が相続を受ける側の手続きが楽だという。

 「本人の意思がはっきりしていても、手続きをしないとスムーズに行かず、遺族関係が悪化することもある。まずは遺言について考えてみて」と高木さん。広島司法書士会(082・511・7196)は年末年始を除き平日正午~午後3時に相談を受け付ける。

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