原発推進の思惑か 経産省、英国から誤り指摘で修正せず

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野口陽
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経済インサイド

 日本政府の掲げる脱炭素化の「根拠」が、英国から誤りと指摘される異例の事態が起きた。経済産業省は「(記述に)表現が足りなかった」「新しい数値を知らなかった」と釈明するが、古いデータを引用して批判を受けるのは、今回が初めてではない。ツイッターでは「国民をだます」意図が取りざたされ、原発再稼働を進める思惑とのつじつまあわせという指摘も出る。

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日本政府が公表した「グリーン成長戦略」。「英国の意欲的なシナリオでも約65%」という記述に、英国側が異議を申し立てた。

太字赤線の記述に見つかった「誤り」

 誤りを指摘されたのは、政府が昨年12月に公表した2050年の脱炭素化に向けたロードマップ「グリーン成長戦略」の記述。風力発電太陽光発電といった再生可能エネルギー(再エネ)について、「最大限の導入を図る」とし、参考値として「2050年には発電量の約50~60%を再エネで賄う」と明記した。その直後に「世界最大規模の洋上風力を有する英国の意欲的なシナリオでも約65%」と記し、公表された「経済産業大臣説明資料」では、この箇所を太字と赤色の下線で強調している。脱炭素に積極的に取り組む英国ですら再エネの導入はこの水準だ、と読み取ることができる。

 この記述について今年1月8日、担当する経産省は英国大使館から「誤り」を指摘された。12日には、日本の政府関係者や環境NPO、メディア関係者あてに「英国はこのような目標は掲げておらず英国の政策ではない」「誤解を招く」とするメールが大使館から一斉に届いた。日本政府の対応を待たずにメールで公表した英国の発信内容はツイッターで拡散され、朝日新聞は14日に報道。経産省は最初に指摘を受けた11日後の19日になって、事実関係を発表した。

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英国大使館が配信したメール。問題の数値について、「誤解を招く内容」「英国の政策ではございません」などの記述がある

「不十分」だが、修正せず

 グリーン成長戦略の記述は、二つの問題点が指摘されている。

 まず、英国政府の方針と誤認させうる書き方だったことだ。経産省が「英国の意欲的なシナリオでも約65%」を引用した原典は、英国政府の公式文書ではなく、英国政府から独立した有識者機関の提言。英国大使館は取材に、「英国政府としては2050年にCO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロとすることは定めているが、電源構成の割合は設定していない。割合は民間にゆだねるというのがスタンス」と説明した。

 さらに、引用データが不適切だった。「約65%」という数値は2019年5月の提言に基づくもので、有識者機関は昨年12月9日に公表した新しい提言で「50年までに80%」と、さらに高い数値を示していた。

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駐日英国大使館=東京都千代田区一番町

 英国からの指摘について、経産省資源エネルギー庁戦略企画室は、「(有識者機関による)提言だと認識はしていた。誤解を招いたので不十分な表現だった」と釈明。古い数値の引用については「昨年12月に新たな提言が出たことは認識していたが、新しい数値が含まれていることは認識していなかった」と説明した。

 ただ経産省は、この記述が「誤り」や「不適切」だったとまでは認めていない。経産省が1月19日に公表した一連の経緯の文中には、「修正」や「訂正」の言葉は入っていない。

 梶山弘志経済産業相は22日の記者会見で、表現が不適切だったのかを問われ、「ひとつ足りなかった。アップデートされる前のもの(数値)だった」と述べるにとどめた。

3年前にも「古いデータ」との指摘

 「国民をだますつもりだった…

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