米大統領の就任式前夜 逆ユートピアの街に感じた悲しみ

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アメリカ総局・青山直篤
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経世彩民 青山直篤の目

 1月19日、バイデン米大統領の就任式の前夜。首都ワシントンの街は静かだった。

 中心部は数々の検問所で封じられ、行き交うのは兵士ばかり。街路で目立つのはホームレスのテントくらいで、そこに感じる人間の営みにほっとする。世界最大の富と軍事力を誇る覇権国の首都は、SFに描かれるようなディストピア(逆ユートピア)の街だった。

拡大する写真・図版バイデン米大統領の就任式前夜、警戒態勢が敷かれた米連邦議会議事堂=1月19日、ワシントン、青山直篤撮影

 兵士たちは、米国民を外敵から守るためにそこにいるわけではない。大統領という最高権力者を、米国民から守るためにいる。しかし、潜在的な危険人物とみなされる米国民そのものが、既に街から排除されているのだ。

 翌日の就任式では、米政界の有力者が一堂に会した。有名歌手のレディー・ガガさんらが祝い、バイデン氏は米国民の団結を唱えた。しかし、閉ざされた会場で権力者と富裕層が盛り上がる構図は、国民の貧困をよそにエリート層だけが甘い汁を吸う、腐敗した権威主義国家のようではないか。少なくとも私の「民主主義」の感覚とは相いれなかった。

拡大する写真・図版バイデン米大統領の就任式が開かれた米連邦議会議事堂周辺を巡回する兵士ら=1月20日、ワシントン、青山直篤撮影

 もちろん、一義的な責任はトランプ前大統領にある。陰謀論にとらわれた支持者をあおり、連邦議会議事堂を襲撃するという前代未聞の事態を引き起こしたのはトランプ氏だ。

 就任式の朝、会場となった議事堂前にはダグ・パジットさん(54)の姿があった。トランプ氏の再選阻止の運動に携わってきた牧師だ。「トランプ氏は米国社会の暗部を『共謀者』として利用してきた」と批判する。

拡大する写真・図版バイデン大統領の就任式の朝、トランプ前大統領への反対運動を続けてきた牧師ダグ・パジットさん(54)は米連邦議会議事堂前を訪れた=1月20日、ワシントン、青山直篤撮影

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