新型コロナは、人々の暮らしを変えました。苦境に立つ人たちをどう支えるか。声は政治に届いているのでしょうか。シリーズで考えます。
日本では7人に1人の子どもが貧困状態にある。深まる教育格差に、コロナ禍が追い打ちをかける。10年余り前に始まった民間の教育支援が、「共助」の先を見据えて動き始めている。
授業のオンライン化進んでも…受けられない実態
教育に使い道を限定した「スタディクーポン」。公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン(CFC)」が手がける事業だ。子ども1人あたり年間15万~30万円のクーポンを発行。子どもが選んだ塾や習い事に使うことができる。
新型コロナウイルス感染症が広がった昨年春以降、保護者や子どもからより切実な声が届くようになった。「食費が2万~3万円増えて生活がとても苦しくなった。学校も塾も通えなくなり、学力低下が心配」「スタディクーポンも使えず、家で勉強している」
利用者は、ひとり親家庭の子どもが多い。休校や塾の閉鎖で学習の機会は失われ、昼食代はかさむようになった。親の仕事も不安定さを増した。
CFCが4月中旬以降、クーポンを利用する300余りの家庭を対象にアンケートをしたところ、7割から回答があった。そのうち半数近くが、子どもが自由に使えるパソコンやタブレットがなかった。インターネット環境がない家庭も。授業のオンライン化で学習機会が遠のく子どもがいる実態が浮き彫りになった。
CFCは、インターネット環境が整っていない約50世帯に、タブレットやWiFiルーターを緊急に貸し出した。8月からは都内を中心に、150人の子どもに計1500万円分のクーポンを追加で配った。
CFCの代表理事、今井悠介さん(34)は「元々あった問題がコロナでさらにひどくなっています。所得も減り、オンライン教育の普及で格差は広がっていて、緊急性はさらに高くなりました」と話す。
学生時代から不登校児の支援に関わってきた今井さんの原点の一つは、不登校や引きこもりの子と一緒に過ごした30日間のキャンプ。生活習慣が身についておらず歯が真っ黒だったり、ほとんど表情がなかったり。そんな子が多かった。経済的な問題やいじめなど自分では選べない環境のため、社会とつながれない子どもがいることを痛感した。
学習塾には不登校の子がいない
就職した学習塾運営会社での…