山崎毅朗
拡大する遺体が語る「声なき声」に耳を傾ける法医解剖医。5回連載でその現場を伝える。デザイン・花岡紗季
2011年3月末、山口大の法医解剖医・高瀬泉の姿は岩手県宮古市の海岸に近い体育館にあった。東日本大震災で亡くなった住民の死亡時刻や死因を確認する「検案」のため、日本法医学会の呼びかけに応じて赴いた。
日本の法制度では、死亡時刻や場所、死因を医師が検案し、「死体検案書」にまとめなければ、被災者の死亡届は原則的に受理されない。多くの死者の検案は喫緊の課題だった。
体育館には、遺体が次々と運び込まれた。身元の確認のため、遺体と対面する家族もいた。亡くなった人の名を泣きながら呼び続ける人や、「何でこんなことに」と叫びを上げる人がいた。
幼い子どもとその母親の遺体も見つかった。母親はわが子を抱きかかえるようにして、硬直していた。
高瀬は「特殊な精神状態だった…
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朝日新聞社会部