信州に故郷見つけたネパール人 温泉でおもてなし修行中
戦前から続く長野県山ノ内町・渋温泉にある老舗旅館「渋ホテル」で2018年春から正社員として働くネパール人のビベク・チワリさん(27)は、信州での生活をとても気に入っている。ゆったりとした時の流れ、自然に抱かれたような心地よさ。「ここの風景は故郷の村とよく似ている。みんな優しくて、まるでネパールにいて家族と過ごしているみたい」
チワリさんは、ネパールの首都・カトマンズの北西約50キロにあるヌアコット郡アマレ村で生まれた。標高約1500メートルの山村はヒマラヤの高地とは違い、地形は険しくない。実家は約2千羽を育てる養鶏農家で、父と母、妹の4人家族だ。
10歳から親類宅に住み、大学まで過ごしたカトマンズ。観光や登山で訪れる日本人が多く、日本が身近な街だった。「いろんな人から日本人が勤勉で真面目な人が多いと聞いていた」。自然と日本とのビジネスに携わりたいと考えた。
「日本で勉強したい」。現地の日本語学校に通っても何か物足りない。東京で語学を磨いて実際に仕事をしてみたい。意を決して14年に来日した。父も「自分の将来のためにチャレンジしたほうがいい」と後押ししてくれた。
2年間、日中は日本語学校の授業に出て、夜は渋谷駅前のうどんのチェーン店で働く日々を過ごした。だが、ビルが密集する大都会では、思い描いていた生活と何か違う。「不安とストレスでホームシックになった」
「それでも日本で働きたい」…