お化け寺、奇跡の絶景に 大工も務めた教林坊住職の決意

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筒井次郎
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 真っ赤なモミジに囲まれ、葦(よし)葺(ぶ)きの本堂と書院が静かにたたずむ。

 滋賀県近江八幡市安土町の小集落にある山寺、教林坊(きょうりんぼう)。見る者の心を奪うこの絶景を前に、住職の広部光信さん(49)は語る。

 「かつてここは荒れ放題のお化け寺だったんです」

 広部さんは集落の別の寺で育った。すぐに寺を継ぐ思いはなく、大学ではドイツ文学を学んだ。就職氷河期に東京の証券会社から内定をもらった。

 「東京に行ったら、もう帰ってこないのでは」。心配した住職の父や母から天台宗の僧侶を養成する叡山(えいざん)学院(大津市)への入学を勧められた。「学院を卒業したら好きにしていい」と言われたので内定を断った。

 聖徳太子の創建と伝わる教林坊はこの時、長い間住職が不在だった。庭園は江戸初期の造園家として名高い小堀遠州が手がけたが、寺全体が山林に埋もれ、朽ちていた。

 1995年。天台宗務庁(同)に勤め始め、僧侶となる決意を固めた24歳の広部さんに運命の日が訪れる。

 「住職不在」が気になり、自宅近くの山林にある教林坊を訪ねた。竹やぶをかき分けてたどり着くと、まばゆい緑の空間が現れた。

 太陽の光が新緑のモミジの葉を通り抜け、苔(こけ)むした地面が輝いている。鳥たちのさえずりが聞こえる。

 ここは観音浄土か。

 冷静に見渡すと、本堂も書院も廃屋同然。それでも広部さんの頭の中には見えた。復興後の情景が。住職になる決意を固めた。

 だが、現実は問題だらけだ…

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