聞き手・箱谷真司
「おてつたび」というベンチャー企業が注目されています。ボランティアでもアルバイトでもない「お手伝い」をする人を、地方へ送る事業をしています。人手不足を解消し、その地域のファンを増やす試みです。コロナ禍で人の往来は減っていますが、利用者の裾野は広がっています。永岡里菜CEO(30、最高経営責任者)に取り組みや現状を聞きました。
――お手伝いって面白そうですね。
「人手不足で困っている地方の観光業や農業に人を送り、1週間から10日ほど手伝ってもらうマッチングサービスをしています。お手伝いはボランティアとアルバイトの『中間』のようなものです。報酬は出ますが一日中働くわけではありません。観光などができる自由時間も設けます。基本的には、旅館や農家に無料で泊めてもらえます」
「ボランティアと聞くと受け入れ側が恐縮してしまうし、逆にアルバイトという名目だと働き手の立場が弱くなることがあります。お手伝いという言葉を使うことで、双方が対等の関係になることを大切にしています」
拡大するおてつたびのサービスを通じて酒蔵でお手伝いをする参加者ら=岐阜県飛驒市、同社提供
――始めたきっかけは。
「私は三重県の尾鷲市という、東京から離れたところで生まれました。観光客もあまり来ない地域ですが、自分にとってはディズニーランドのような夢の国だったんです。町を歩いていると『永岡さん宅のお孫さんかね』と声をかけてもらえました。海へ行った後に祖父の行きつけのスナックでかき氷をつくってもらえたり、町の売店ではお菓子をおまけでもらえたりしました。食べ物や海も好きですが、なによりも人が温かくて魅力的でした」
「大学時代に関東に出てくると、尾鷲市のことは誰も知りませんでした。当時はあきらめの気持ちもありましたが、就職したベンチャー企業で和食の普及事業のため地方を回るなか、何もないと思われていても魅力的な地域がたくさんあることに気づいたんです。そんな地域に関心を持ってもらえるような仕組みをつくりたいと思い、2018年に起業しました」
ながおか・りな 1990年三重県生まれ。2013年に千葉大学教育学部を卒業後、東京のイベント企画・制作会社へ入る。ディレクターとして官公庁や大手企業の案件を手がけた。17年にベンチャー企業へ移り、和食を普及させる取り組みを農林水産省とともに担う。18年に「おてつたび」を設立。一般社団法人・日本起業アイディア実現プロジェクト主催の「女性起業チャレンジ制度」で、グランプリを19年に受賞した。
拡大するおてつたびのサービスを通じて農家でお手伝いをする参加者ら=青森県三沢市、同社提供
――お手伝いをしたい人はたく…
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