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 昨春のように、再び街は静まりかえるのか――。新型コロナウイルスの感染拡大で、首都圏を対象にした緊急事態宣言や時短要請に向けた動きが一気に加速した。「しかたがない」「なぜうちが」。飲食店を中心に、あきらめや戸惑いが広がっている。

 「もう店をたたむかもしれない。今回の時短営業の要請は、とどめになる」

 東京・神保町でダイニングバーを営む40代男性は、午後8時までの閉店を求められるというニュースが流れると、そうこぼした。

 本来の営業は午後6時から午前2時まで。しかし36席ある店にはこの日も、開店からしばらく客は1人もこなかった。都内の感染者が急増した昨年12月以降、客数が大きく減っているという。

満員電車はよいのに「飲食店だけがターゲット」

 昨春以来のたび重なる時短要請にも応じ、借金して乗りこえてきたが、「もう限界だ」と話す。追加の時短要請に応じるかは、まだ決めていない。「行政はただ要請するだけでなく、しっかりとした支援をお願いしたい」

 千葉市中央区の焼き肉レストラン「shira」の店長、井戸口知子さん(49)は「さらなる時短は死活問題。従えるかどうか……」と悩む。

 売り上げが前年に比べて半減するなか、検温や手指の消毒、換気、加湿と、店内の感染防止対策に力を入れ、時短要請に応じてきた。それなのに、また。「飲食店だけがターゲットになっている。満員の通勤電車への対策など、順序が逆なのではないか」と不満を募らせる。

 千葉市中央区の繁華街にあるレストラン「ビストロ・レコルト」の店長、大塚裕敬さん(40)は、新たな時短要請に応じる予定だ。

 でもこれまでの要請期間中、周りでは午後10時以降も営業する店があった。「自分の店を早く閉めても、行列ができている店もある。強制力の無い要請に意味はあるのか」という。

 客の入店ピークは午後7時ごろ。通常、食事のラストオーダーは閉店時間の1時間前なので、午後8時閉店となると「(大半の客に)ほとんど何も提供できない」と話す。

 千葉県では、11日までの時短要請に応じる店には1日あたり4万円の協力金が一律に支給される措置がとられている。助かってはいるのだが「店の大きさや、店員数、お客さんの人数など店舗ごとに事情が違うので、一律ではない支給額の設定が必要ではないか」と訴えた。

 さいたま市大宮区の居酒屋で働く男性店員(24)は「ピークタイムの午後8時から営業できないのは追い打ち」と漏らす。コロナ禍で近くの飲食店が相次いで閉店するのを目の当たりにしてきたといい、「『Go To』事業で感染者が増えるのは目に見えていたはず。十分な補償も期待できないので緊急事態宣言には反対」と話した。

 今回の要請で、12日以降は、すべての飲食店で午後8時までの時短を求められる。

 納得がいかないのは、横浜市内でコーヒーショップを営む男性(61)だ。店は10席ほどあるが、午後7時以降の客は3~4人ほどだという。間隔を空けて座ることやマスクの着用をお願いしている。「学生が遅くまで自習で使っているんです。パソコンをしているサラリーマンもいる。大声でしゃべるような店でもないから、飛沫(ひまつ)はないのですが……」

 東京都千代田区で半世紀近く続く喫茶店「神田伯剌西爾」の竹内啓店長(49)が心配するのは、街の人出が減ってしまうことだ。昨春の宣言時も、売り上げは4割ほど減った。

 「客は基本的に静かに過ごしているが、ここまで感染者が増えていれば、仕方がない」と、午後9時の閉店時間を繰り上げる方針だが「多くの客が、飲食店は危ないのではという気持ちになるだろう。一度離れた客がまた戻るには、時間がかかる」。

 一方、東京・丸の内の保険会社に勤める女性(35)は「経済への影響は心配だが、強いメッセージを出すには緊急事態宣言が必要だと思う」と語った。年末年始は大阪府の実家に帰らず、東京で過ごした。近所の神社に初詣へ行こうとしたが、人が多くてやめたという。「時短要請などでは人々の行動を止めるには不十分。医療崩壊が起こる前に、対策を講じてほしい」

全国知事会は「緊急事態宣言検討を評価したい」

 全国知事会は4日、菅義偉首相が緊急事態宣言を検討すると表明したことに「1都3県の知事からの要請を最大限に踏まえていただき、評価したい」とするコメントを発表した。都道府県への支援や特別措置法改正についても、「実効性ある抜本的対策を機動的に断行」するよう求めた。

 一方、全国で一斉停止中の「Go To キャンペーン」については、「感染状況などの地域の実情を踏まえ、適切に運用」するよう要請した。知事会の新型コロナ緊急対策本部で本部長代行を務める平井伸治・鳥取県知事は取材に「キャンペーンは国の事業で、全国的な観点で12日以降も止める判断なら、適切と考える。すぐに再開しろという趣旨ではない」と話した。