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 新年おめでとうございます。帰省をやめていつもと違ったお正月を迎えた読者の方もいるかもしれません。お祝いムードにもなりにくい世の中ですが、やはりお正月くらいは楽な気持ちで過ごしたいものですね。

 今年もこの連載は医学の知識を横目で見つつ、ちょっと不健康な生活を応援します。

 冬場の健康の話題といえば決まって物議を醸すのが、餅とカキです。

 お餅はのどに詰まりやすいし取り出しにくい、餅で窒息して亡くなる方も多い、というわけで、特に高齢者は、小さく切ったうえよくかんで食べましょう、と言われます。

 カキはノロウイルスによる食中毒を起こすことがあり、よく加熱して食べましょう、と言われます。

 ノロウイルスは嘔吐(おうと)や下痢で汚れた環境を介して広まることも多く、アルコール消毒ではなくならないので、次亜塩素酸ナトリウムなどを使いましょうとも言われますね(ただし吸い込むと鼻やのどを痛めますので、スプレーはおすすめできません。ゴム手袋などをつけ、ペーパータオルなどを使って拭き取ってください)。

 小児科の先生からよく聞く話では、ノロウイルスの検査というものがあるのですが、ノロウイルスに効く薬はないので、検査しても本人にとってあまりいいことはなく「先生、うちの子ノロウイルスじゃないんですか」と尋ねられると困ってしまうのだとか。

 さて、カキが好きな方は「食中毒くらい覚悟のうえで食べたい」と思うかもしれません。その考え方には連載の趣旨として小声で賛成します。いや、カキに限っては、もう少し大きい声でもいいかもしれません。

 第一に、日本では食中毒で亡くなる方は非常にまれです。厚生労働省が食中毒の統計を取っているのですが、2011年から19年のうち、一番多かった16年で14人、そのうち10人はベロトキシン産生腸管出血性大腸菌によるものでした。この菌の名前は「O-157」の食中毒でご存じかもしれません。

 ノロウイルスによる食中毒での死亡と判断された方は、11年以降は1人しかいません。対して、餅が詰まって亡くなった方の正確な統計はないのですが、人口動態調査を元にした研究(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200057/_pdf/-char/ja別ウインドウで開きます)によれば、正月三が日に「気道閉塞(へいそく)を生じた食物の誤嚥(ごえん)」で亡くなった方は06年から16年までの平均で172人いました。

 10年で1人に対して、毎年172人です。餅を食べる勇気がある人なら、ノロウイルスを恐れてカキを避けるのは理屈に合いません。

 ちなみに例年数人しかいない食中毒による死亡の原因のうち、唯一毎年のように報告されているのが植物性自然毒です。イヌサフランとかトリカブトを誤って家庭で調理してしまったようです。野草を食べるのはカキとは比較にならないくらい危険だと言えます(それでも趣味で食べたいという方は小声で応援しますが)。

 第二に、ノロウイルスによる食中毒の大多数で、感染源となった食品は特定されていません。19年に報告された212件、患者数合計6889人のうちで、はっきりカキが原因と報告されたのは13件だけです。カキだけ食べないようにしてもそれほどの差はなさそうです。

 第三に、最近の食中毒患者数はかなり減っています。最近10年では12年の2万6699人が最多で、ゆるやかに減少傾向にあったのですが、20年は特に少なく、この原稿を書いている時点でわかる1月から11月までで8311人でした。

 ノロウイルスだけが食中毒では…

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