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 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」は、日本史上、きわめて謎が多いとされる「本能寺の変」に向かって、クライマックスを迎える。この「本能寺の変」に参加していた明智光秀の家臣が語ったとされる情報が、「乙夜之書物(いつやのかきもの)」という書物に記録されていた。この書物の記述を検証しながら、3回にわたって、「本能寺の変」の実像を探る。連載の初回。

 天正10(1582)年6月2日早朝、戦国武将・織田信長(1534~82)の天下統一事業を支えてきた明智光秀が、主君を討った本能寺の変。加賀藩(現在の石川県と富山県の一部)の兵学者が事件の87年後に著した「乙夜之書物(いつやのかきもの)」という書物には、本能寺襲撃に参加した光秀の家臣から聞いた情報として、光秀軍の詳しい動きが記録されていた。

 「乙夜之書物」とはどのような本なのだろうか。今回、詳しく調査した富山市郷土博物館主査学芸員の萩原大輔さんによれば、加賀藩士で兵学者だった関屋政春(せきや・まさはる、1615~85)が、古老らから聞き取った戦国時代のエピソードなどを書き残した自筆の聞き書きで、計3巻から成る。上巻と中巻が江戸時代前期の寛文9(1669)年に、下巻は寛文11(1671)年に成立したと考えられている。光秀に関する記述は上巻に見られる。現在、3巻とも金沢市の市立玉川図書館近世史料館が所蔵する。

 肝心な内容の信頼性についてだが、萩原さんは上巻の奥書(書き入れ)にある「他人に見せることを禁じる」という記述に注目する。「第三者に読まれることを意識しておらず、記述の作為は少ないだろう。本文の記述も情報源が具体的に記され、戦国時代の貴重な情報が含まれている可能性がある」とみる。

 エピソードの中でひときわ異彩を放っているのが、光秀の重臣だった斎藤利三(としみつ)の三男、利宗(としむね)が語ったとされる本能寺の変の挙兵の経緯についてだ。

 これまでの研究では、挙兵前後の事情を知ることができる史料は極めて少ないとされてきた。信頼性が高いとされる「信長公記(しんちょうこうき)」は光秀は前日の6月1日、亀山城(現在の京都府亀岡市)で、明智左馬助(さまのすけ)、明智次右衛門、藤田伝五、斎藤利三の重臣4人に謀反の意思を打ち明けたと記す。一方、江戸時代初めに書かれた豊臣秀吉の軍功を中心とした「川角太閤記(かわすみたいこうき)」は、この4人に加え、家臣の溝尾勝兵衛が謀議に加わったと記す。だが、光秀旧臣の山崎長徳と林亀之助が「(光秀が)5人と相談したとは聞いていない」と語ったとも書かれ、その実情はよくわかっていない。

 ここに新たな光をあててくれるのが、「乙夜之書物」だ。斎藤利宗が、加賀藩士とされる、おいの井上清左衛門に語った内容として、関屋は次のように書いている。

 光秀は、中国地方で毛利勢と戦う羽柴秀吉への援軍という名目で、自軍の兵を亀山城へ集めた。利三は1日昼ごろ、兵を引き連れて亀山城に到着する。待ちかねていた光秀は、城の入り口で利三を出迎え、一緒に城内の奥にあったとみられる数寄屋に入った。

 このとき、利三は上座に座った光秀から謀反の決意を初めて告げられる。利三が「先鋒(せんぽう)は私が引き受ける」と伝えると、光秀は喜び、勝手口に控えていた左馬助を呼んで、「みな同じ気持ちである」と述べ、左馬助は「めでたいことと存じます」と応じた。

 光秀が「暑いので何かないか」と言うと、冷やした道明寺(飲み物か?)が皆に供された。すずり箱と熊野牛玉の宝印が押された料紙が出され、そこにいた武将たちは自らの血を使い、誓詞血判状を書いた。その後、光秀は軍勢を率いて、日暮れ前に亀山城を出発した。

 萩原さんは「後の記録とは言え、利宗は機密情報を知りえた重臣の利三の息子で、本能寺の変だけでなく、山崎の戦い(光秀が羽柴秀吉に京都府の山崎で敗れた戦い)でも最前線で活躍した武将。その証言には耳を傾ける価値がある」と話す。

「乙夜之書物」が別史料と一致する点、異なる点

 昨年12月に「明智光秀」(中公新書)を出版した京都府大山崎町の町歴史資料館の福島克彦館長も「光秀が本能寺の変の直前に部下たちから起請文を出させたくだりは、別の史料とも一致し、大変興味深い」と話す。

 ただし、亀山城をいつ出発した…

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