[PR]

 文部科学省の調査で、全国の大学で昨年4~10月に、約5千人の学生がコロナ禍の影響で休退学していたことが判明した。一方で全体の休退学者は約9万人と、前年より13%減った。国や大学が経済的支援や学生相談などに力を入れてきたことが奏功したとみられる。専門家は、コロナ不況の長期化などで休退学が今後増える恐れが強いとして、国などに支援の継続を訴えている。

 「親の収入が減り、自分も働けない。学費のために借金するくらいなら大学をやめたい」

 高等教育の無償化を求める学生団体「FREE」のアンケートに届いた学生の声だ。コロナ禍で家計が悪化したり、対面授業や課外活動などの制限が続く大学生活に疑問を感じたりして、休退学を考える学生は少なくないという。

 文科省調査では、2020年4~10月にコロナ禍の影響による中退者は1033人、休学者は4205人だった。一方、全体では中退者は2万5008人と前年の同じ期間より21%減り、休学者は6万3460人と10%減った。文科省は、国や大学の支援が奏功した面もあるとみる。

 コロナ禍で家計が急変した学生について国は、昨年4月に始まった低所得世帯向けの修学支援新制度の対象とするよう条件を緩和。生活を支えるアルバイト収入が減った学生には、最大20万円の緊急給付金も支給した。

 だが、対象外になる困窮学生も多いため、大学などの98%が授業料など学費納付の猶予を認めている。夏休み明け以降の「後期」の授業料納付を猶予されている学生は全体の7・2%で、昨年より0・8ポイント多いという。また、72%が授業料などの減免を独自に実施し、86%は支援金を配ったりパソコンやルーターを貸し出したりして、支援している。

 朝日新聞と河合塾が昨年9~11月に実施し、82%(631大学)が回答した共同調査「ひらく 日本の大学」にも、大学独自の支援策の内容が多数寄せられた。

 「生活への影響を把握するため、学生に緊急調査を実施。その結果を受けて独自の支援制度を作り、該当者に一律3万円を支給した」とする愛媛大など、経済的な支援に取り組む大学は多い。帝塚山大は「コロナ禍による経済的理由で高校生が進学をあきらないよう、入学金を半額とする特別制度を設けた」とする。

 入構制限や授業のオンライン化で学生と対面する機会が減ったことを心配し、対応を工夫する大学も。大阪成蹊大は「全学生とのオンライン面談によって、個々の学修・生活状況の把握と個別フォローを実施。必要に応じて、利用可能な奨学金制度の案内を漏れなくおこなった」。沖縄県立芸術大は「実技科目で対面授業を実施しても安全安心に大学運営を行うため、学生と大学の方針などの情報を共有し、教職員には、対話を通してより丁寧な学生目線の対応を依頼している」とした。

 オンライン授業の質を確保することで対応しようとしているのは、日本文理大だ。「学生の成績や単位修得状況などを昨年度と比較した情報を各教員に提供し、後期からの授業方法などに反映させた」という。

 こうした支援にもかかわらず、「10月までは授業料減免の申請者数はそれほど増加していないが、年度末までにはかなり増えると思われる」(東京経済大)などと、調査では、休退学の申し出が例年多い年度末を警戒する大学が目立つ。「経済的理由で休退学する学生の増加」を昨年10月時点で特に懸念する大学は15%だったが、21年3月の予想を聞くと30%に達した。

 文科省は、今後も予断を許さないとして、バイト収入が大幅に減った学生向けの無利子奨学金の再募集といった支援を続ける。(編集委員・増谷文生)

「決断先送りの学生多い」山本繁・大正大特命教授

 学生に問題が発生してから退学届を出すまでに、平均約11カ月のタイムラグがあることがわかっています。昨年4~10月に中退した学生の多くは、19年の5月から11月に問題が発生したことになります。今回、中退者が少なかったからといって、問題が起きていないわけではありません。

 コロナ禍で中退を決意したり、退学届を出したりする行動を先送りしている学生が多いと考えられます。不況による失業・休職などが報じられるなか、中退のリスクを例年より高く考える学生が多いようです。アルバイトを解雇されるなどして、フリーターも難しいと考えたケースもあったでしょう。

 私は今後、中退者が大幅に増えることを危惧しています。コロナ禍の影響が学生に出始めた昨年4月以降に起きた問題は、今年3月以降に中退という行動となる可能性が高いからです。

 では、どうするか。取得単位が少ない学生は中退リスクが高くなります。教員はこうした学生と個人的な信頼関係を築くことから始めるべきです。社会の状況を学生と共有し、在学中や卒業後の生活を、いっしょに再設計するとよいでしょう。また、友人ができた学生は中退リスクが減ります。オンライン授業でも、学生同士、学生と教員が関係を築きやすい対話型の授業を提供することに力を入れるべきです。

 大学は4月には次の新入生を迎えます。中退を予防するには、入学直後から7月の間が重要です。例年この時期に、学業を続けられなくなる問題が多く発生するからです。特にコロナ禍を1年体験した今年の新入生は、例年、あるいは昨年と比べてどんな特徴があり、どんなケアが必要なのか。大学の垣根を越えて情報をいち早く共有し、対応することが肝要です。

 国は学生本人と、学生を経済的に支える大学両方への経済的支援を続けることが重要です。また、忘れてはならないのが家庭でのケアです。オンライン授業が普及し、通学する機会が減って乱れがちな学生の生活リズムを整え、学ぶモチベーションが保てるように応援してもらいたいと思います。(聞き手=編集委員・増谷文生)

 やまもと・しげる 1978年生まれ。慶応義塾大卒業後に教育NPOを立ち上げ、100人を超える中退経験者へのインタビュー結果をまとめた「中退白書2010 高等教育機関からの中退」などを出版。17年から大正大特命教授。