第10回いつか、またシリアで… 難民が伝える「望郷のパン」

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イスタンブール=高野裕介、ローマ=河原田慎一
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 民主化運動アラブの春」から10年。内戦とその後の混乱がいまも続く中東のシリアから、600万人以上が国外に逃れた。このうち約360万人のシリア難民が暮らす隣国トルコでは、丸くて平たいパン「ホブズ」が彼らの日常を支えている。ほんのり香ばしく、ほかの料理のじゃまをしない控えめな味だ。

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朝食をとるシリア難民のアナス・モサッリさん(右)。ホブズでおかずをくるみ、長女のタジちゃんに食べさせた=イスタンブール郊外、高野裕介撮影

 ホブズは、日本人にとっての米のような存在。イスタンブール郊外に住む難民のアナス・モサッリさん(32)は朝食でホブズをちぎり、香辛料を巻いたり、おかずをつかんだりしていた。食卓にフォークとスプーンはない。モサッリさんは3歳の長女の口にホブズを運びながら、「このパンがあることで、次の世代に食文化を伝えられる。苦しい難民生活だが、日常を感じることができる」と語った。

 ホブズを作っているのも、シリアから避難してきた人たちだ。イスタンブール郊外にあるパン工場では午後10時すぎ、カメラのレンズが曇るほどの湿度と熱気の中、翌朝に売るためのパンが次々と焼き上がっていた。汗だくになって生地をこねるシリア人の頭上で、焼きたてのパンがベルトコンベヤーで運ばれていく。

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シリア難民のパン工場では、汗だくになりながら焼きたてのパンを袋詰めにしていた=イスタンブール、高野裕介撮影

「一番体に合うんだよ」

 「シリア人には、やっぱりこ…

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