新垣卓也
「満月、見んの怖いなぁ」
焼け野原になった神戸・長田にある南駒栄公園。
当時28歳だったミュージシャンの中川敬(たかし)さんは、たき火を囲む人がそうつぶやくのを聞いた。
差し入れの焼酎を飲みながら見上げると、丸い月が輝いていた。
約1カ月前の1995年1月17日、神戸の街を激しい揺れが襲っていた。
その日の空には赤く染まった満月が浮かんだ。満月は、恐れとともに人々の記憶に刻まれていた。
中川さんの頭の中に、ある曲が浮かんだ。
数日前、知り合いのミュージシャン山口洋さんから「一緒に曲を作らないか」と電話をもらった。彼はギター片手に、東京から大阪の家までやってきた。
三線(さんしん)で掛け合い、出だしは1~2時間でできた。次に会った時に続きを作ることにして別れていた。
「もっと大きな揺れが来るかもしれない」
人々が、そう恐れて見つめる満月を歌にしよう。
赤い満月が植え付けた、恐れや悲しみ。「明るい一歩を踏み出せるように」。そう願って作られた曲は、のちに思わぬ広がりを見せていきました。
中川さんは思いつくまま曲の続…
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