保守分裂・コロナ禍 異例の舌戦に有権者は 岐阜知事選

松沢拓樹、松永佳伸、藤田大道、高木文子 渋谷正章、原知恵子
岐阜県知事選、「保守分裂」の構図と候補者4人の顔ぶれ
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 7日に告示された岐阜県知事選には4人が立候補を届け出た。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で始まった選挙戦は、自民党議員が現職支持と新顔支持で二分され、55年ぶりの「保守分裂」となった。異例の舌戦を有権者はどう見ているのか。

 立候補したのはいずれも無所属で、元内閣府大臣官房審議官の江崎禎英氏(56)、新日本婦人の会県本部会長の稲垣豊子氏(69)=共産推薦=、薬剤師で元県職員の新田雄司氏(36)の新顔3人と、5選を目指す現職の古田肇氏(73)。

 県選出の自民党国会議員7人は、県連会長の野田聖子衆院議員ら6人が古田氏、大野泰正参院議員が江崎氏をそれぞれ支持する。県連幹事長や会長代行を歴任して「岐阜のドン」とも呼ばれる猫田孝県議(80)=当選13回=ら「重鎮」が江崎氏を推すが、同党県議31人の支持は分かれている。

 古田氏の陣営は、コロナ対応の「公務優先」を掲げ、出陣式や遊説を取りやめた。古田氏は岐阜市内の事務所で防災服姿で会見し、「県民の命を守る観点から、もう一段踏み込んだ対策を至急に講じなければいけない。私の戦いの場はコロナ対策」と述べ、理解を求めた。

 会見には野田氏も同席し、「選挙の有利不利でなく、県民の命を守ることに邁進(まいしん)して頂くことが最重要と判断した」。陣営はオンラインなど新しい形の選挙活動を模索するという。

 江崎氏は岐阜市での第一声で、「新しいことが始まる。岐阜県から日本を変えて、新しい時代をつくる」と訴えた。新型コロナを巡っては「自粛、自粛で経済が傷み、日常が苦しくなっている」として「正しいコロナ対策を作り、コロナを終わらせていこう」と呼びかけた。

 江崎氏の擁立を主導した猫田氏は「差は徐々に詰まっているがこれからが勝負」と強調。山県市長、飛驒市長、笠松町長、垂井町長も姿我々は挑戦者。正々堂々と戦って江崎知事を見誕生させましょう」と話した。出陣式の営は参加者には検温などをした。

 両陣営では早速いがみ合いも。ある関係者は対立候補への支持が強い地域での集会について、「票を持っていかれるのが分かっているから会場を借りられない」と憤る。野田氏は報道陣の取材に「国レベルでみるといつも分裂している。それを乗り越えてくるから自民党は強みがある。ポジティブにとらえていく」と強調。猫田氏は「選挙が済んだら議員は戻ってくる。県連が割れることはない」と語った。

 稲垣氏は岐阜市内で第一声をあげ、「県の税金の使い道を大きく変える。誰ひとり取り残さないために、一番弱い人から手当てをしていく」と訴えた。推薦を受ける共産党志位和夫委員長のほか、立憲民主党今井雅人衆院議員(比例東海ブロック)から激励のメッセージが寄せられた。支持者は会場で体温測定し、間隔をあけて演説を聞いた。

 新田氏は岐阜県庁前で演説し、新型コロナ対策について「緊急事態宣言特別警報と位置づけ、警報、注意報を入れた3段階警戒レベルを導入する」と訴えた。(松沢拓樹、松永佳伸、藤田大道、高木文子)

「関心高い」「大変な時に仲間割れ」…有権者はこう見た

 知事選をどうみているのか。岐阜県の有権者に聞いた。

 これまで投票に行かないこともあったという岐阜市の男性会社員(39)は「今回の選挙は行くと思います」と言う。「外に出られない日々が長く続き、行政に関心が高まった。候補者がどんなコロナ対策を考えているか、興味がある」

 新型コロナ対応で特に生活支援を求めたのが岐阜市の女子学生(19)だった。アルバイト先の飲食店が営業時間短縮(時短)となり、収入が減った。「地域の事情に応じ、きめ細かい対策を打ち出して欲しい」。岐阜市の繁華街、柳ケ瀬で居酒屋「がんこ村 柳ケ瀬店」を営む宮下邦厚さん(47)も同様の思いだ。時短への県の協力金について「店の規模や経営状態に関わらず一律で、実態に即していない。本当に必要なところに行き渡っていない」。年末年始の客足は例年の1割だったという。

 55年ぶりの保守分裂には様々な見方がある。タクシー運転手の男性(59)は「大変な時に、仲間割れはいかがなものか」と話す。平工(ひらく)光子さん(72)は「県議の報酬減額もあり、古田知事が嫌われたのでは。等しく痛みを分かち合うために必要だった」。桜井正孝さん(78)は「古田さんも江崎さんも元は官僚の先輩後輩。能力と人格で評価すべきだ」。

 候補者の一部が街頭演説を見送るなど、異例の告示日となった。本巣市の男子大学生(19)は「政策はインターネットで調べられる。直接聞けなくても問題ない」と語った。(渋谷正章、原知恵子)