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 電車はなるべく車両の後ろ側に乗る。「換気がいい」との説をテレビの情報番組で聞いたからだ。窓は開いているか。マスクをしていない人は近くにいないか。素早くチェックする。

 新型コロナウイルスの感染が広がり、東京都のNPO法人職員、三好(みよし)かおりさん(59)はそんな習慣がついた。慢性腎臓病(CKD)で、人工透析を受けている。はたらきが低下した腎臓に代わり、専用の機器で約4時間かけて血液中の老廃物や余分な水分を取り除く。自宅近くのクリニックに週3回通う。

 「自分が感染し、ほかの患者さんにうつしてしまったら……」。そんな不安が消えない。透析治療中の患者をはじめ、持病がある人が感染すると、重症化しやすいと聞いたからだ。透析中の患者は感染したら原則、入院になるという。透析も新型コロナの治療も受けられる病院はすぐに見つかるだろうか。

拡大する写真・図版患者らの団体「東京腎臓病協議会」で働く三好かおりさん=東京都豊島区

 思い返すと、病気の最初の兆候は長女(31)の妊娠中にあった。検査で尿の中にたんぱく質が混ざっていると指摘された。たんぱく尿は腎臓のはたらきの低下を意味するが、医師からは何も言われず、気にとめることはなかった。

 出産してほどなく、夫(66)の転勤で東京から北海道へ引っ越し、子育てに追われた。東京に戻った後の1996年ごろの健康診断で、たんぱく尿が再び出た。

 東京都内の総合病院を受診すると、医師から「腎臓が悪いから、気をつけなさい」と注意された。「どうしたらいいですか?」と尋ねると、「いまは何もすることがない。経過を見守るしかない」と言われた。

「経過を見守る」はずだったのに…

 たんぱく質や塩分などの摂取量を制限して腎臓への負担を減らす食事療法や、通院をすすめられることもなく、月日が過ぎた。だが、約2年後の健診でもたんぱく尿が出て再検査となった。同じ病院を受診すると、同じ医師から「何でこんなになるまで放っておいたんだ?」としかられた。

 「何もすることがないと言ったのは、あなたじゃないか」。心の中でそうつぶやいたが、「すみません」と謝った。

 2000年初め、透析治療が始まった。

 週3回、自宅近くのクリニックで1回約4時間、腎臓の代わりに専用の機器で血液中の老廃物などを取り除いた。

 最初の1カ月ほどは治療の開始時間は午後4時ごろ。長女(31)は当時小学4年で、夫(66)は仕事で帰宅時間が遅かった。長女に夕食をつくり、「ごめんね。1人で食べてね」と言って出かけた。状況を理解してほしくて、「この治療をしないとお母さん、死んじゃうんだ」と伝えた。長女は何も言わなかったが、さみしかっただろうと思う。

 広島や愛知への帰省やスキー旅…

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