韓国の慰安婦訴訟判決、首相「断じて受け入れられない」

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ソウル=鈴木拓也 鈴木拓也=ソウル、安倍龍太郎 清水大輔
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 旧日本軍慰安婦だった韓国人女性ら12人(故人含む)が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は8日、原告の訴え通り、日本政府に1人当たり1億ウォン(約950万円)の慰謝料を支払うよう命じた。日本政府は、国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の原則「主権免除」を理由に裁判自体を否定。控訴もしない方針のため、一審判決が確定する見通しだ。

 日本外務省の秋葉剛男事務次官は8日、韓国の南官杓(ナムグァンピョ)駐日大使を呼び、「極めて遺憾だ」と抗議した。菅義偉首相は8日、首相官邸で記者団の取材に応じ、「我が国としては、このような判決が出されることは、断じて受け入れることはできない」と強く反発し、訴訟の却下を求めた。

 地裁は判決で、原告が慰安婦として受けた行為は「日本によって計画的、組織的に強行された反人道的犯罪」と認定。主権免除は「他国の個人に大きな損害を与えた国に、賠償を逃れる機会を与えるために作られたものではない」として、日本政府に適用されないと判断した。また、原告の賠償請求権は、日韓請求権協定や2015年の日韓慰安婦合意の対象に含まれていないとした。

 判決はまた、当時の日本が「軍と国家が組織的に計画を立て、『慰安所』を運営した」と断定。原告らは「常に暴力にさらされ、最小限の自由も抑圧された監視下にあった」と認めた。

 原告は、元慰安婦が共同生活を送る「ナヌムの家」(韓国京畿道)の女性ら。13年に地裁に民事調停を申し立てたが、日本政府が応じず、16年に提訴した。地裁は昨年になって、裁判所に掲示することで被告に訴状が届いたとみなす「公示送達」の手続きを取り、審理を進めた。

 同地裁では13日にも、元慰安婦ら20人が日本政府に賠償を求めた訴訟の判決が予定される。(ソウル=鈴木拓也)

菅首相「完全かつ最終的に解決済み」

 「国際人権法の人権尊重原則を進んで確認した先駆的な判決だ」。8日午前、ソウル中央地裁の判決後、元慰安婦を支援する「正義記憶連帯」(正義連)の李娜栄(イナヨン)理事長は興奮気味に、記者団に語った。そして、日本政府は「歴史的な事実を歪曲(わいきょく)し、『日本軍慰安婦』の被害自体を否定してきた」として、「速やかに判決に従い、賠償しなければならない」と求めた。

 対照的に、この日の韓国政府の反応は鈍かった。韓国外交省は「政府は裁判所の判断を尊重し、被害者の名誉回復のためにできる努力をしていく」との短いコメントを発表。韓国大統領府の報道官は、会見で記者から見解を問われても「外交省が説明する」として口をつぐんだ。

 日韓関係は、元徴用工への賠償を日本企業に命じた2018年の韓国大法院(最高裁)の判決をきっかけに悪化し、今も解決への道筋は見えない。こうしたなか、文在寅(ムンジェイン)政権は米国のバイデン次期政権の意向や、夏の東京五輪を機に再び南北関係の進展を図りたいとの思惑から、対日関係の改善を模索。昨年11月上旬から要人を相次いで日本に派遣するなど、積極的な動きを見せていた。韓国政府関係者は「司法の判断が韓日の外交関係に影響を与えないようにしたい」と話すが、妙案はない。

 一方、国家には外国の裁判権は及ばないという国際法上の原則「主権免除」を理由に裁判を拒んできた日本政府は、判決に強く反発した。菅義偉首相は8日、記者団に「慰安婦問題については、1965年の日韓請求権協定において完全かつ最終的に解決済み」と述べた。

「冷却期間」が長引くとの見方も

 今回の判決で日本外務省内に…

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