「非常事態」下で舌戦は 岐阜知事選、陣営の不安と反発

松沢拓樹 岩尾真宏
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 7日に選挙戦が始まった岐阜県知事選で、新型コロナウイルスが各陣営に大きな影響を与えている。9日に県独自の非常事態が宣言され、「密」を避けながら有権者にどうアピールするか、関係者は戦略の見直しを迫られている。

 知事選には元内閣府大臣官房審議官の江崎禎英氏(56)、新日本婦人の会県本部会長の稲垣豊子氏(69)=共産推薦=、薬剤師で元県職員の新田雄司氏(36)の新顔3人と、5選を目指す現職の古田肇氏(73)の計4人がいずれも無所属で立候補した。県選出の自民党国会議員の大半が古田氏を支持する一方、重鎮県議らが江崎氏を推すなど、55年ぶりの保守分裂となった。24日に投開票される。

 「異例」の選挙戦を展開するのは古田氏の陣営だ。コロナ対応の「公務優先」として7日の告示日の出陣式を中止し、選挙期間中に古田氏の個人演説会などを開かない。古田氏を支持する県議らが「代理」で街頭で訴える。

 古田氏は非常事態を宣言した9日に県庁で2度の記者会見を開くなど、現職としてコロナ対応に専念する姿勢を示す。この日、下呂市であった街頭演説にはタブレット端末を通じて参加した。

 ただ有権者と直接触れ合う機会がほぼなくなるため、陣営内には「賭けだ」との声も。支援する自民党岐阜県連会長の野田聖子衆院議員は「中央集権ではなく個人主義的な選挙」と新しい選挙様式を模索しつつ、「多くの有権者に理解を頂けるか不安でいっぱい」と語った。

 一方、江崎氏の陣営は消毒などの感染防止策をとりつつ、演説会などを開く。同党県連幹事長を務める村下貴夫県議は8日の岐阜市内での会合で、古田氏陣営について「政策で選挙をできると思った矢先に(公務優先という)コメントを出した」と述べ、「県民が何を考えているか分からなければ政策が打てない。民意と離れた政策はベストでもベターでもなく、税金の無駄遣い」と批判した。陣営幹部からは「(姿を見せない)『ステルス作戦』なんて選挙では通用しない」との声もある。

 ただ新型コロナの感染拡大が続く中、「公務優先」を批判しづらい面もあり、陣営には危機感がある。江崎氏を支える同党県連会長代行の猫田孝県議は「(古田氏陣営は)県庁が選挙事務所のような感じ。方法としてはものすごくいい。我々は選挙運動をよほどしっかりやらないと」と自陣営を引き締める。また、非常事態宣言を受けて個人演説会を午後8時までにするなど、日程の修正も余儀なくされている。

 稲垣氏の陣営は、本人を含めた陣営関係者がPCR検査を受けた上で、選挙活動を展開。検温などを行いながら、PCR検査の徹底や収入が減った人への財政支援を訴える。

 新田氏は新型コロナの感染拡大を太平洋戦争などに次ぐ「最大の危機」と位置付け、感染防止と経済活動の両立を訴えている。(松沢拓樹、岩尾真宏)

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