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アナザーノート 浜田陽太郎編集委員

 「劇場版『鬼滅の刃(やいば)』無限列車編」で強く胸に迫ったシーンがあります。主人公が所属する「鬼殺隊」の重鎮、煉獄(れんごく)杏寿郎(きょうじゅろう)が死の間際、病床の母親からかけられた言葉を回想する場面です。

 「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」

 ひどく新鮮に聞こえるのは、自国優先主義や格差が広がり続ける現実社会では、倫理に訴える直球の言葉を聞く機会が少ないからかもしれません。

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 さて、新型コロナウイルスのワクチン接種が、欧米では昨年末から始まり、日本での開始も近そうです。

「情けは人のためならず」か

 「世界人口で14%に過ぎない富裕国が、主要なワクチン候補の53%を買い占めている」「2021年末までに貧しい67カ国では10人中1人しか接種できない」

 英国生まれの国際NGO「オックスファム」は、「強い」先進国が経済力に任せて、ワクチンを独占しようとする動きを繰り返し批判しています。

 私も「自国民の命を優先するのはしょうがないんじゃないか」と考えてしまいがちな一人です。

 でも、ワクチンを経済力でなく人口に応じて配分した方が、より多くの人命を救えるという研究があります。

 米ノースイースタン大の試算によると、裕福な50カ国が世界のワクチンの3分の2を使うと死者数が33%減るのに対して、すべての国に人口に応じて配分すると61%減らせるというのです。

拡大する写真・図版米ノースイースタン大は「もし2020年3月からワクチンが使えるようになっていたら」という仮定で、「30億回分のうち最初の20億回分を高所得50カ国が使った場合」と「人口比例で使った場合」を比較。「ワクチン無し」の状態から救える命の割合は、前者が33%だが、後者は61%になるという結果をはじき出した=ゲイツ財団のウェブサイトから

 さらに、ワクチンを平等に配ることが世界経済のためによい、という報告もあります。

 米国の国際政治学者、イアン・ブレマー氏が率いる調査会社「ユーラシア・グループ」は昨年末、リポートを発表しました。

 中低所得国を含め世界にワクチンが公平に行き渡ることによって、富裕な10カ国が受ける経済的な恩恵は、2025年までの5年間で4660億ドル(約48兆円)にのぼるというのです。

 「富裕な10カ国」には、もちろん日本も入っていて、5年間に1.4兆円の恩恵があるといいます。アジアを中心とした国々との輸出入が回復し、海外から観光客も戻ってくるからです。

 オリンピックのホスト国である日本が国内で感染の抑え込みに成功しても、世界で流行が続いていれば外国人客がウイルスを再輸入するだろう。だからこそ、ワクチンの平等な普及は、日本にとってリスクを最小化するカギを握っている――。

 リポートはこう説いています。

 でも、ワクチンを世界に普及させるには、どうしたらいいのでしょうか。

ゲイツ財団の寄付、日本より大きく

 カギを握る人物がいます。マイ…

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