[PR]

 リモートでワーク(仕事)をしながら、旅先でバケーション(休暇)を楽しむ。「ワーケーション」と呼ばれるそんな生活スタイルがコロナ禍を機に、四国でも目につき始めた。

 東京農工大大学院2年の日野嘉彦さん(24)=東京都出身=は昨年10月、高知県安芸市を訪れた。県内に2カ月間滞在し、フィールドワーク(勉強)と仕事、余暇を組み合わせた日々を送った。

 高知に来たのは、専攻分野にかかわる現場を「林業大国」で学ぶためだ。新型コロナウイルスの感染拡大がなければ、高知ではなく北欧にいるはずだった。

 4月から1年間休学し、スウェーデンに国費で留学する予定が延期に。空き時間でスキルアップをしようと6月、社員の多くが起業しているネット企業ガイアックス(東京)でインターンを始めた。主にリモートで、外国人労働者向けの人材サービス事業の開発などの業務に当たった。

 「林業の『川上』で現場を学びたい」。留学先だったスウェーデンの教員から週1回、オンラインで指導を受けるうち、国費留学生としての使命感が芽生えた。

 知人の紹介で安芸市のゲストハウスに1カ月滞在した。原木市場やバイオマス発電、備長炭の製造工程などを見学した。11月からは本山町のシェアハウスに移り、間伐作業を間近で見て学んだ。インターンの仕事もパソコンと通信環境があればこなせたという。

 休日を自分で決められるのがリモートの利点だ。東京以外に長く滞在するのは初めて。安芸市では時間があれば浜辺に足を運び、室戸岬も訪れた。カツオのタタキやシラス丼も味わった。本山町では車を借りて四国カルストまで足を延ばした。気分転換を兼ねて早明浦ダム(土佐町)の湖畔のカフェで、パソコンに向かう日も。「リフレッシュできました」

 12月から東京に戻った。新型コロナが収束すれば留学する。将来は起業も視野に入れている。高知に行って気づいたことがある。「人口が減り市場が縮小している地方には人とお金が流れることが大事。ワーケーションは地方の活性化に有効だと思う」

     ◇

 ワーケーションを受け入れる環境整備も動き出している。

 昨年11月中旬、土佐清水市のキャンプ場に多くの人が集まっていた。高知県がワーケーションを進めようと初めて企画した2泊3日のモニターツアー。主に県外企業の社員ら20人余りが参加した。

 キャンプ場を運営するアウトドアメーカー「スノーピーク」の役員、後藤健市さんが講演した。野遊びに詳しい後藤さんは地方は野遊び資源の宝庫だとして「何もないのではなく、余計なものがないという考えに変えるべきだ」と強調した。

 一帯は足摺宇和海国立公園内にあり、近くには竜串(たつくし)湾の奇岩や足摺岬など見どころが多い。参加者はテントやコテージに宿泊し、サイクリングや観光バス巡りを楽しんだ。キャンプ場では環境省の補助事業を活用してWiFiが整備され、パソコンに向き合う人の姿もあった。

 関東地方などでキャンプ場を経営する山梨県富士吉田市の「PICA(ピカ)」の専務、山本裕彦さん(52)は「経営に参考になれば」と参加した。

 PICAのキャンプ場は5月ごろまでコロナ禍で利用が激減したが、秋以降は人混みを避けたい客で例年より増えたという。「ワーケーションは大事な取り組み。今後需要が出てくると思っている」と話す。

 高知が初めてという別の参加者からは「ストレスがないし、地方の良さも知ることができる。ワーケーションを周りにも勧めたい」との感想が聞かれた。

 高知県は2020年度の補正予算で計約2500万円を計上するなど、ワーケーションに力を入れている。「高知の強みである『自然と食』との親和性が高い」と県地域観光課の担当者。土佐清水市内の4事業者が環境省の補助事業の採択を受けてWiFi環境を強化するほか、県独自の補助事業にも宿泊業者などから申請が来ているという。(清野貴幸)

関連ニュース