資金の不安ない子ども食堂、仕組みは?チケット制に脚光
全国5000カ所以上で開設されている子ども食堂。しかし、多くが資金面で不安を抱え、実際、運営が行き詰まるケースも多い。そんな中、安定した資金繰りで運営できる仕組みを、奈良県橿原市の子ども食堂が考案。全国に広がっているという。いったい、どんな仕組みなのだろう。
堺市中区の居酒屋「呑Ma(のま)」には、午後5時から7時半まで、別の店名の看板が出る。「子ども食堂 ひみつ基地」。
店内の壁にはチケットがずらりと貼られている。やって来た子どもたちは、チケットを取ってカレーを注文。おいしそうに平らげる。
このチケット、実は夜に営業している居酒屋の常連客らが、買っていってくれたものだ。常連客らは自分の飲み代に上乗せして、カレー1杯が食べられる1枚250円のチケットを買い、壁に貼っていく。チケットには買った常連客の名前が書かれていて、子どもたちは、「○○さんのもらおう」と、チケットを取っていく。
客がチケット購入
食堂は、近所に住む看護師の佐藤正一さん(45)が、居酒屋の開店前の時間帯を間借りして、約半年前に開いた。
クラウドファンディングで71人から支援してもらった約104万円で鍋や食器などを購入。その後は居酒屋の常連客らがチケットを買ってくれ、そのお金を食材費などに充てているため、ほとんど持ち出しはない。
居酒屋の女将(おかみ)によると、常連客らは自分の名前のチケットがなくなっているのを見て「おっ、俺の使ってくれた」と喜んでいるという。佐藤さんは「心のどこかで、何かしてあげたいと思っていても、どうしていいかわからない。そんな人の思いを子どもたちにつなげたい」と話す。
同様の仕組みを多店舗に広げ「タコライスラバーズ」を立ち上げたのは那覇市の山川宗徳さん(40)だ。沖縄県警の元警察官で、320万円あまりの支援を全国から集め、先月からスタートさせた。タコライス店はもとより、食堂やカフェ、沖縄そば屋など約30店が参加。それぞれの店が、タコライスを提供する子ども食堂を運営している。
山川さんはまず、集まった支援金から参加してくれた店に、タコライス100杯分の代金とチケット100枚を配布。参加店は、これらを元手に子ども食堂を開く。その後は、店ごとに売りやすさや採算を考えて、300円以下の値段で、客にチケットを販売する。小学生以下の子どもはそのチケットを使い、沖縄のソウルフード、タコライスを無料で食べられる。
山川さんはタコライス発祥の地、同県金武(きん)町で生まれた。小銭を握りしめて買いにいくと、近所の店のおじさんは多めに盛ってサービスしてくれた。「沖縄の子どもの貧困が問題となっているが、自分もそうだった。活動の原点は地域の人へのお返し」と話す。
最初にこの仕組みを始めたのは、奈良県橿原市で学習塾を経営する斉藤樹(しげる)さん(49)だ。家庭状況による教育格差を感じ、まずは、誰もがおなかいっぱいになれる場所をつくりたいと2年前、格安のカレー店「げんきカレー」を開店。その後、「みらいチケット」として定着していった。
夕方は誰もが食べられる子ども食堂となり、ボランティアの大学生らが勉強も教えている。
現在、全国から「同じ方法で…