「俺が死んだら車と燃やして」 約束破ったから出会えた

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若松真平
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 2019年2月、名古屋市であったカーイベントの会場に、2台のNSXが並んでいた。

 どちらもオーナーはすでに他界し、それぞれ妻が出展した車だった。

 お互いのことを知らない2人は、会場で初めて顔を合わせた。

 これまでたどってきた同じ道のりを思うと、目を合わせただけで涙がこぼれた。

 それ以上は何も話すことができなかった。

    ◇

 岐阜県各務原市の長谷川るみ子さん(55)の自宅ガレージで眠る、1999年製の青いNSX。

 2018年に55歳で亡くなった夫・勝則さんの愛車だ。

 ナンパで知り合った2人は、勝則さんが21歳、るみ子さんが19歳の時に結婚した。

 出会ったころから彼は車好きで、若いのに高級セダン「クラウン」に乗っていた。

 サラリーマン生活でお金がないから、と言って買い替えたのは、まさかの2ドア車「セリカ」だった。

 先輩から安くで譲ってもらった、と言っていた。

 その次は大きな四駆「プロシード マービー」で、運転に慣れるまでが大変だった。

脱サラして起業

 結婚から5年経って夫が脱サラし、印刷会社を立ち上げた。

 夫婦で切り盛りしながら、部品組み立て会社に業態を変え、携帯電話やゲーム機、車の部品などを請け負った。

 会社の業績がいい時を見計らって、勝則さんは車の買い替えを打診してきた。

 セダンやミニバンを経て「ハイエース」を購入し、キャンピングカー仕様にして夫婦で旅行に出かけた。

 分岐の道にさしかかるとジャンケンをし、どちらに行くかは運任せという旅が多かった。

 そんな夫が2004年に購入したのが青いNSXだった。

 発売当時から憧れていた車で、いくつもの中古車ディーラーを回ってから決めた。

 この車にしてからは、服の色も好んで青を選ぶようになった。

 会社のユニホームまで青にしようとしたので、さすがにとめた。

 「俺が死んだ時は、NSXを棺にして一緒に燃やしてくれ」

 ことあるごとにそう言うので、「わかりました、そうしてあげる」と答えていた。

 まさかこんなに突然、別れの日が来るとは思いもしないままに。

 2018年5月27日、娘が…

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