拡大する写真・図版南海トラフ地震に備え、国、和歌山県、同県海南市が共同で行った避難所運営訓練。感染防止のため高さ1・4メートルの段ボールで作られた仕切りが設置された=2020年11月15日、和歌山県海南市、矢木隆晴撮影

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 新型コロナウイルスの感染拡大が、私たちの生活だけでなく、防災や救急搬送といった「災害への備え」の形も変えている。南海トラフ地震や台風、豪雨による被害を想定した防災の最前線を追った。

拡大する写真・図版高校の体育館で段ボール製の仕切りとベッドを組み立てる市職員=2020年11月15日、和歌山県海南市、矢木隆晴撮影

避難所に仕切り

 南海トラフ地震に備え、新型コロナ感染予防に配慮した避難所を設営する訓練が昨年11月、和歌山県海南市であった。避難所は「3密」になりやすく、高齢者も多いことから、感染拡大への対策が求められている。

 県立海南高校の体育館に、高さ1・4メートルの段ボールで作られた仕切りが設置された。単身者用、2人用、3、4人用と3種類の大きさがあり、内部には、雑魚寝より感染防止に効果があるとされる段ボールベッドも用意された。国の基準に基づき、仕切りと仕切りの距離は1メートル。訓練では、発熱がある人と濃厚接触者はそれぞれ別の場所に分けられた。

拡大する写真・図版受付で、手指の消毒をする訓練参加者=2020年11月15日、和歌山県海南市、矢木隆晴撮影

 訓練では保健所職員の指導の下、市職員はウイルスがつかないように防護服や手袋を着脱する方法も学習。受付で体温を測り、手指を消毒するなど、感染予防対策が徹底された。海南市危機管理課の坂本匡也課長は「仕切りを作ることでプライバシーを配慮し、感染症予防が期待できる」と話していた。

拡大する写真・図版大阪市消防局が導入を進める搬送用カプセル「アイソレーター」=2020年12月2日、大阪市西区、水野義則撮影

搬送も厳戒態勢

 大阪市消防局(大阪市西区)が、ウイルスの感染防止に使う搬送用カプセル「アイソレーター」。透明なカーテンに囲まれたストレッチャーの中に患者を入れて、救急車やヘリコプターで病院まで搬送する。

 患者が呼吸した空気を、ウイルスを取り除くフィルターを通して排気することで、救急隊員らの感染を防ぐことができる。現在1台しかなく、フル稼働状態で、使い終わったらその都度消毒している。コロナ患者が急増していることを受け、今年度中に12台増やして救急搬送に備えるという。

 地震や津波、豪雨による大規模災害時、避難者やけが人が発熱している可能性もあることから、活用が期待されている。

拡大する写真・図版太陽工業が新開発したテント=2020年11月26日、高知市、水野義則撮影

テントも通気よく

 南海トラフ地震を想定した高知県での訓練では、太陽工業(大阪市淀川区)が新開発したテントがお目見えした。「大スパンシェルター」というテントで、幅約12メートル、奥行き約7メートルの大きさがある。10分ほどで設置が可能で、壁を取り外すと通気を確保できるほか、壁を取り付けてポンプで空気を抜き「陰圧テント」にもできるのが特徴だ。

 災害時、避難所などに設置して、新型コロナ患者の屋外PCR検査や、ベッドを並べて隔離病棟としても使える。すでに全国の自治体から問い合わせも入っているという。

拡大する写真・図版訓練の動画をパソコンやスマホで確認する「教養型防災訓練」=2020年11月19日、大阪市中央区、水野義則撮影

リモートで避難訓練

 大阪市中央消防署(大阪市中央区)は、新型コロナの感染拡大でテレワークが進み、実際に人が集まる防災訓練ができないことを受け「教養型防災訓練」を開発した。災害が起きた時にどう対応すればよいか、訓練の要点をまとめた動画をパソコンやスマホで見た後、理解度を確認するテストを受けることで、防災訓練の代わりにすることができるという。

 大阪・ミナミの繁華街にあるカプセルホテルでは、参加した従業員が、パソコンやスマホを使って訓練をした。建物内で火災が起きたことを想定し、避難や誘導の方法を確認した。毎年実施するという。(水野義則、矢木隆晴)