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 広島大学工学部の前身「広島高等工業学校」の卒業生が出征する際、母校関係者から贈られたとみられる寄せ書きが12月、米国に住む70代の女性から同大総合博物館(広島県東広島市)に寄贈された。卒業生は第2次世界大戦中、ビルマ(現・ミャンマー)で戦死した。親族は博物館で活用されることを望んでおり、同大は「平和を考えるメッセージ」として展示したいという。

 卒業生は、同校醸造学科選科を1936(昭和11)年に修了した福岡県三潴(みずま)郡(現・大川市)出身の廣瀬壽一さん。寄せ書きは縦70センチ、横85センチの日の丸に「必勝 廣瀬壽一君」の墨書に加えて校名や当時の校長、教授ら30人近くの名前が書かれている。38年か39年に書かれたとみられる。布の状態などから、戦地には持参されなかった可能性があるという。

 昨年2月、沖縄県出身で米ミシガン州に住む女性から「ご家族に返したい」と博物館に連絡が入った。女性は、沖縄県の米軍基地内で2003年まで教師をしていた米国人の女性から譲り受けたという。元教師は那覇市内で着物などと一緒に購入したと語っていたという。寄せ書きが沖縄にあった理由は不明だ。

 博物館が調べたところ、福岡市内に親族の男性(56)が存命で、廣瀬さんの生涯も判明した。廣瀬さんは1893(明治26)年創業の「廣瀬酒造」の長男として生まれ、1942(昭和17)年5月、27歳で戦死していた。同年8月に父親も死去。弟2人はすでに他界しており、母親1人が残されたという。家業は廃業になったとみられる。

 寄せ書きの展示時期は未定。博物館の清水則雄准教授は「今の学生と(年代が)近い人たちが召集され、戦わざるをえなかった事情を振り返る機会は、ほとんどない。多くの若者に見てもらい、先人たちの思いに寄り添ってほしい」と話した。(北村浩貴)

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