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 【宮城】岩手県を拠点に、東日本大震災を題材とした舞台を制作し続ける会社がある。震災から10年を前に、今月には仙台市などで公演を開き、五つの物語からなるオムニバス作品を上演する。出演者の中には、沿岸部で被災した若者もいる。

 企画した「みんなのしるし合同会社」は岩手県大船渡市を活動の拠点とし、被災者への聞き取りを基にミュージカル「いのちてんでんこ」を制作。全国を回り、50回ほどの公演を重ねてきた。

 今回の主題を「いのちのかたりつぎ」とした。代表の前川(まえがわ)十之朗(じゅうじろう)さん(55)は震災から10年を「活動の新たな始まりとして捉えたい」と語る。背景には、記憶の風化が進んでいることへの危機感がある。「沿岸部の小学校でも震災を経験していない児童も多くなった。これから本気で取り組んでいかないと」。舞台の身体表現を通じて、追体験して欲しいと考える。

 上演されるのは、五つの物語。車を運転中に津波に遭遇した男性とAI搭載のカーナビとの「会話」を描いた作品や、福島県在住の詩人、和合亮一さんの詩をモチーフとした「Fukushima Voice」、「いのちてんでんこ」の一部などを披露する。

 出演者は宮城、岩手、東京などで活動する9人。松本莉奈さん(23)は震災当時、福島県楢葉町の中学生だった。東京電力福島第一原発の事故の影響でいわき市に移り住み、現在は東京で歌などを学んでいる。「いつか震災に関係した舞台はやりたいと思っていた」という。

 「Fukushima Voice」には福島の人々らの声が登場する。松本さんは「被災者といっても色々な考えがあり、一人の中でもまとまっていない。原発事故で言えば責める気持ちの一方で、町が潤ったり、知り合いが原発で働いたりと思いは複雑」。この作品を「色々な感情が交ざり合い、いい意味で抽象的な感じ」と表現する。

 熊谷衡さん(21)は小学5年の時に被災。岩手県陸前高田市の家は全壊し、仮設住宅で暮らした。「今回の主題は、命の語り継ぎ。いま生きている人につなげていくという役割に責任を感じる」と話す。

 コロナ禍は舞台づくりにも影響を与えた。感染予防のため、オンラインでの「リモート稽古」が中心。ようやく今月初め、宮城県石巻市に全員が顔をそろえ、通し稽古などに臨んだ。「リモートだと直接顔を合わせず突っ込んだ話をしにくいが、離れた土地に住みながら同じ目的に向かって進めるというメリットも感じた」と前川さん。

 仙台公演は17日午後2時から、仙台市福祉プラザ(青葉区)で。入場券は3千円でチケットぴあ、「book cafe 火星の庭」(同)などで販売中。問い合わせは「みんなのしるし」(0192・47・5123)へ。(高橋昌宏)

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