【動画】伊豆で越冬した死滅回遊魚が産卵=岡田和彦撮影
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 静岡県伊豆半島周辺の海では昨年まで、水温の高い状態が続き、多くの南方種の魚が越冬した。例年では見ることのできない現象も起きている。西伊豆町では、厳寒期に死滅し、成魚になることのなかったアオスジテンジクダイの産卵が確認された。

 昨年9月10日、西伊豆町の黄金崎に地元ガイドの高木剛彦さん(56)の案内で写真家の堀口和重さん(34)と潜った。岩の間をのぞくと目の周りのスジが青く光るアオスジテンジクダイが何匹もいた。

 伊豆で見られるのは大きくても体長5センチまでの幼魚だが、優に10センチを超えている。オス、メスのペアが何組もいる。あごが大きく膨らんだ個体の口の間からピンク色の粒がのぞく。オスが卵をくわえ孵化(ふか)するまで守り育てる口内保育をしている。卵で腹の膨らんだメスもいる。別の岩の間には仲間のアオハナテンジクダイのペアもいた。こちらも体長は約10センチ。オスがメスに寄り添う繁殖期特有の行動をしている。

 伊豆半島周辺の海域では夏から秋にかけて、南の海で生まれたばかりの南方種の幼魚が流れ藻などと共に黒潮に乗って琉球列島などからやってくる。カラフルで愛らしい姿はダイバーたちに人気だ。

 しかし、2月から3月の海中の厳寒期に水温が14度前後に下がるのに耐えきれず死滅し、姿を消してしまう。このような南方種を「季節来遊魚」あるいは「死滅回遊魚」と呼ぶ。しかし、ここ2年続けて海水温が16度程度までしか下がらず、多くの南方種が越冬し成長を続けている。

 沼津市の水族館「伊豆・三津シーパラダイス」魚類飼育マネジャーの水野晋吉さん(48)は「温暖化による長期的な水温の上昇傾向に加えて黒潮の大蛇行、記録的な暖冬で海水温が下がらず、海の生き物に大きな影響を与えている。死滅回遊魚の概念や生息域の北限が変わる可能性もある」と指摘する。

 海の気候は陸上から1~2カ月遅れて巡る。今年の厳寒期はこれからだ。(岡田和彦)

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