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 【和歌山】「串本から小型の人工衛星をどんどん打ち上げる。宇宙宅配便を目指します」。串本町で、昨年秋に開かれたシンポジウム。発射場を建設、運営する「スペースワン」最高顧問の遠藤守さん(69)は、そう高らかに声をあげた。

 遠藤さんが宇宙宅配便というように、スペースワンは、2020年代半ばには年20回の打ち上げを目指している。契約から打ち上げまで1年以内という素早さや低コストも売り文句だ。

 技術革新が進み、衛星の重さは00年ごろは3~4トンだったが、現在は0・5トン以下が増えているという。特に小型の人工衛星(150キロ以下)を活用する宇宙産業への期待は、世界的に高まっている。世界で予想される打ち上げ数は、18年からの10年間で約4600機。17年までの10年間の4・4倍に達すると見込まれている。これまで、小型衛星は大型衛星と一緒に打ち上げられるケースが多く、発射時期を希望しにくかった。スペースワンは「宅配便」のように小型ロケットを頻繁に打ち上げ、ニーズに応える。

 急成長する宇宙産業に着目したキヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社がスペースワン(本社・東京、太田信一郎社長)を設立。同社は一昨年3月、串本町に発射場を建設すると発表した。

 なぜ、串本町なのか。関係者によると、予定地の周囲に高い建物や住民が少なく、ロケットを打ち上げる南や東方向に島などがない▽鹿児島県の種子島や内之浦の発射場と違い、本州にあるので、ロケットや人工衛星などの製造工場から近い▽串本につながる自動車道の建設が進み、将来はアクセスがよくなる▽技術者らが泊まるホテルなどの宿泊施設が周辺に多い、などが主な理由という。開発しにくかった山がちな紀伊半島が、逆に利点となった。

 発射場には、「射点」と呼ばれる打ち上げ場、ロケット組み立て棟、総合指令棟などの施設が建てられる。来年3月までに1号機の打ち上げを目指している。

 打ち上げるロケットは高さ18メートル、重さ23トン。3段式で、固体燃料で飛ぶ。日本では固体燃料ロケットの技術が蓄積されている。1970年、日本初の人工衛星が固体燃料ロケットで打ち上げられた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する「イプシロン」は最新型の固体燃料ロケットで、信頼性が高い。構造が比較的シンプルで、民生部品と合わせて低コストでできるという。

 JAXA前副理事長でもある遠藤さんは「小型衛星のニーズはとても高い。事業は現在、順調です」と強調した。一方、最大のライバル社は、「ロケット ラボ」(米国)とみる。小型衛星の打ち上げをビジネスとし、ニュージーランドに発射場がある。すでに十数機を打ち上げ、世界をリードしている。

 国内では、堀江貴文さんが出資している宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」(IST)だ。19年に小型ロケットの打ち上げに成功。昨年12月、北海道大樹町に新社屋と新工場を完成させた。遠藤さんは「ISTのロケットの燃料は液体なので、少し運用などが違うのかな」とみる。小型ロケットを開発する企業は国内外に100社ほどにもなった。世界が競争相手だ。

 太田社長は記者会見で「地域の方々と緊密に連携し、国際競争力のある商業宇宙輸送サービスの実現を目指す。事業を拡大し、雇用など地元の経済に貢献できるようにしていきたい」と語った。(直井政夫)

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