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 昨年4月、イタリア北部・クレモナの病院の屋上からバイオリンの調べが降り注いだ。新型コロナウイルス感染者の治療にあたる医療従事者を癒やしただけでなく、その光景は動画で世界中に広がった。演奏したのは大阪府箕面市出身のバイオリニスト横山令奈さん(33)。愛知県などでコンサートを開いた。

 クレモナは、ストラディバリやアマティといったバイオリンの名職人を生んできた。2006年から横山さんが暮らしてきた音楽の街は昨年4月、買い物以外では外出できないロックダウンとなった。

 4月3日、静まりかえった街で、市民が心のよりどころにしてきたクレモナ大聖堂の鐘楼「トラッツォ」に上がり、横山さんは告知なしで演奏を始めた。運び込んだスピーカーを通して15分間、「アベ・マリア」などのバイオリンの調べが街中に広がった。

 偶然、自転車で通りかかったクレモナの病院の広報担当が「空から音が降ってきた」と演奏に気づき、病院でのサプライズ演奏を横山さんに打診した。

 4月16日、屋上で、病院からのリクエストも含む「ガブリエルのオーボエ」や映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の愛のテーマなどバイオリンに祈りの気持ちを込め演奏した。横山さんは「演奏中、テントから人が出てきてくれて大きな拍手をくれた。非日常の中に日常の一瞬を作り上げた不思議な体験だった」と振り返る。

 二つの演奏は動画で配信され、世界中に広がった。「世界中からメッセージをもらい、音楽に思いを込めることの大切さに気づいた」

 今回のコンサートでは、同郷のピアニスト杉林岳さんとともに、鐘楼や病院屋上から届けた曲などを演奏。病院のコンサートで演奏した際のいきさつや思いなどのアフタートークもあった。

 23日に山口で、24日に大阪(緊急事態宣言発出の影響もありチケットは完売)で公演がある。

 日本も感染拡大が止まらず、緊急事態宣言が再び各地に出される状況となっている。横山さんは「コロナ禍のなかで演奏家は何ができるかを考えてきた。今まで以上に聞いてくださる方のことを考え、私自身の思いを込めて伝えたい」と話す。(小原智恵)