波佐見ジビエ再び熱い視線、企業撤退後、若手猟師が継承

原口晋也
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 長崎県波佐見町で途絶えかけた狩猟肉(ジビエ)活用の機運が、再び熱を帯びている。2年半前、県外でジビエ料理店を展開する企業が波佐見産のイノシシ肉の加工を始めたものの頓挫。地産地消の動きも一時、しぼみかけたが、地元の若手猟友会員が直接、加工販売に乗り出した。

 東京や福岡でジビエ料理店を展開する企業が、波佐見町井石郷(いせきごう)に地元で捕れたイノシシ肉の加工施設を開いたのは2018年夏。それまで町内で害獣駆除されたイノシシは焼却・埋設されていたが、加工・出荷されるようにもなった。

 猟友会員らは「捕れた肉は、食すのが本来のあり方」と歓迎した。町などからの害獣駆除の報奨金に加えて、肉を買い取ってもらえるようになった。

 だが、町外から食肉加工の担い手として招かれた猟師は、創業時の過大な負担もあって19年離職し、ジビエ料理の企業も撤退した。それでも地産地消の夢を捨てきれない地元猟友会の城後(じょうご)光さん(39)らは昨年2月、賛同者を募って資本金50万円でジビエ加工販売「モッコ」を創業した。森を興すの意の造語だ。

 引き継いだ加工施設では城後さんにスカウトされた関孝治さん(41)が、肉質を確認しながら部位ごとに肉をそぎ、解体する。それをハム作りで定評のある福岡県の手作り工房に出荷。粗挽(あらび)き・香辛料入り・プレーンの3種類のウィンナーとして製品化した。

 扱う肉は、仕留めて30分以内に加工施設に持ち込める新鮮さを条件にした。他社のイノシシ肉の加工品では脂ののりの悪い季節はブタの脂を注入して代用することが多いが、モッコは冬場のイノシシの脂身を保存しておき、活用する。「地元産のイノシシ肉100%をうたう責任」(城後さん)という。

 そんなこだわりも評価され、ネットショッピングだけでなく、ふるさと納税の返礼品にもなった。一昨年、肉の供給が途絶えて料理を出せなくなった町内の中華料理店も、コロナ禍の客足を見つつ仕入れを再開した。

 これまで県外資本や県外の人手に頼ってきた加工施設の運営だが、地元雇用を生み出せる期待も膨らみ、関係者に笑顔が戻った。だが、城後さんは「害獣駆除は重労働。かたや猟友会員の高齢化は深刻だ。市町村単位で対応するやり方は近い将来行きづまる」と、先行きには危機感も抱く。

 そこで期待を寄せるのが、広域的なネットワークの広がりだ。これまで町外の猟師から取引を持ちかけられても、「30分以内」の条件を満たせず断ることもあった。だが、害獣に悩む農家と猟師、加工施設を橋渡しできれば、ジビエの活用はもっと広がる。城後さんは「広域で害獣駆除に対応する素地もつくりたい」と、県北にネットワークを広げることを構想している。(原口晋也)