震災後生まれのカップルに神戸の会社が挙式をプレゼント

松永和彦
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 【兵庫】結婚式場「北野クラブ ソラ」(神戸市中央区)の運営会社クレ・ドゥ・レーブが、1995年の阪神・淡路大震災から翌96年3月末の間に神戸市で生まれたカップルに挙式プレゼントを企画し、13日に1組が式を挙げた。

 新婦の坂田沙彩(さあや)さん(24)=同市中央区=は昨年7月に長男を出産。コロナ禍で外出自粛が求められる中、おむつを買いに出かけるのにも気を使ったり、生まれたばかりの子どもを連れて電車に乗るのを不安に感じたりしていた。

 そんな中、一番の頼りだったのが、震災の翌年に沙彩さんを出産し、育ててくれた母だ。不安の中で子育てをする自分に、当時の母の姿を重ねた。

 震災当時、母は神戸市北区の集合住宅で、父と3歳だった兄の3人で暮らしていた。兄は倒れた棚に足を挟まれて骨折した。そんな話を、式を前に初めて詳しく聞いた。「大変な時に私を産んで、育ててくれたんだ」

 母は言った。「周りの人がみんな助けてくれた。だからつらいことがあっても乗り越えられたんよ」と。私もきっと大丈夫。そんな気持ちになった。

 もともと挙式は昨年の夏ごろにする予定だったが、妊娠したことやコロナのため、あきらめていたという。

 同社の担当者によると、阪神大震災以降、神戸市内では震災があった1月17日前後は、式が避けられる傾向にあったが、近年は徐々に解消されつつあるという。

 震災から間もなく26年。式を挙げるカップルにも震災後に生まれた世代が増えてきた。こうした若い世代に、神戸で生まれたことを再確認してもらおうと、18年に始まり、今回で4回目という。

 この日は感染拡大防止のため、新郎新婦の両親や近しい親族ら計10人だけで式を挙げた。純白のドレスに身を包んだ沙彩さんは「コロナ禍で前日まで挙式するか悩んだけど、お母さんにはありがとうという気持ちを伝えられたと思う。震災を振り返る機会が少なくなっているけど、息子にはしっかり引き継いでいきたい」と話した。(松永和彦)

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