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 うその内容の電話で資産をだまし取る「ニセ電話詐欺」の被害が高止まりしている。茨城県内の昨年1年間の被害額は約5億5千万円。増えているのが、「口座が不正に使われている」などと偽り、「キャッシュカードの交換が必要」とカードをだまし取る手口だ。県警は「警察や金融機関がカードを預かることはない」と呼びかける。

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 昨年12月3日。常総市内の男性(84)宅の固定電話が鳴った。

 「あなたの口座から現金を不正に引き出した男たちを逮捕した」

 語りかけたのは、警察官を名乗る男。突然の連絡に動揺する男性に、男は続けた。「他に口座は持っていますか?」。素直に他の口座の存在を伝えると「その口座も不正に使われている」と続けた。

 男性は男に聞かれるまま、暗証番号を伝えた。すると、「キャッシュカードは警察で預かる」と言われ、自宅を訪れた男にカード4枚を手渡した。2日間のうちに、口座から計223万6千円が出金された。

 県警ニセ電話詐欺対策室によると、昨年1年間の県内のニセ電話被害の認知件数は306件、被害額は約5億5千万円。2019年よりも70件、約8300万円ほど減った。県警は、金融機関の窓口を被害の「水際」ととらえ、声かけをする対策が一定の効果をあげたとみている。

 一方で、増加傾向にあるのがキャッシュカードをだまし取る手口だ。電話をきっかけに、犯人グループが自宅を訪れて「カードを預かる」とだまし取ったり、印鑑を取りに行かせた隙に偽物のカードとすり替えたりする手口は、188件と全体の約6割を占める。被害額は約2億4千万円にのぼった。

 犯人側にカードをだまし取られてしまうと、高齢者が自ら金融機関の窓口を訪れて振り込むことは少なくなる。焦って窓口に来た高齢者に注意を促す水際対策をとりにくくなるのが実情だ。

 県警は「警察や役所、金融機関がカードを預かることは絶対にない。暗証番号は教えず、警察に相談して欲しい」とする。また、犯罪の起点になる電話を防ぐため、特に高齢者には固定電話を留守番電話に設定するよう呼びかける。

 顧客の資産を預かる金融機関も、こうした手口への対策を迫られている。

 常陽銀行は3月20日から、70歳以上の顧客が口座から引き出せる限度額を1日あたり50万円から20万円に引き下げる。ATMで20万円を超える金額を引き出そうとすると、画面にエラー表示が出ることになる。対象になるのは約40万人で、すでに引き出し額を設定している人や個人事業者は対象外。リスク統括部の担当者は「利便性が低くなったとしても、被害を最小限にすることを優先した」と理解を求める。

 被害防止の最大のカギは、うそを見抜く意識を持ってもらうことだ。

 ハウスメーカーの「茨城セキスイハイム」は県警と連携。「キャッシュカードは渡さない!」「暗証番号は教えない!」と記載されたプレート2万枚を作成し、ドアノブにひっかけて使うことができる。今後、寄贈を受けた県防犯協会と県警が防犯キャンペーンなどの際に配布する。同社の寺内勝社長は「玄関などで使ってもらい、家に住む人の注意喚起とともに、『見せる防犯』として犯行を断念させるのも狙いだ」と話している。(佐々木凌、久保田一道)

カードをだまし取られる被害のきっかけになった電話の実例

・警察官を名乗る男が「あなたの口座に詐欺のお金が振り込まれている。キャッシュカードなどを指紋認証にする」

・「年金課職員」を名乗る男が「消費税が8%から10%になったので差額を受け取れる」

・家電量販店の従業員を名乗る男が「あなた名義のキャッシュカードで買い物をしようとしている女がいる」

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