上司黙認、仕事中に株価見る若者 韓国で投資熱の理由は

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ソウル=鈴木拓也
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 韓国の株式市場が活況を呈する。総合株価指数(KOSPI)はコロナ禍にもかかわらず、昨年の1年間に主要20カ国・地域(G20)で最も高い上昇率を記録。その勢いは年明け後も止まらない。主役は「東学アリ」と呼ばれる若者だ。バブルを懸念する忠告に耳を貸さず、投資に熱を上げるのはなぜか。

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韓国総合株価指数(KOSPI)が史上初めて取引時間中に3000を超えた2021年1月6日、大手銀行のディーリングルームにある電光掲示板に示された「3000」の指数=東亜日報提供

 韓国中部の地方都市にある電子部品メーカー。この中小企業に勤める事務職の男性(28)は、勤務中にパソコンで業務関連のメールをチェックするふりをしながら、ネットサーフィンを繰り返す。欲しいのは株価の値上がりが期待できる企業情報だ。「上司の目を盗んで、みんなやっている」と悪びれる様子もない。

 月給は約300万ウォン(約28万円)。いい人がいれば、結婚して子どももほしいが、「今の収入ではマンションが買えないし、教育費も賄えない」。10年前には5%前後あった銀行の預金金利は1%を下回る。「コツコツと貯蓄する意味がない」と考え、昨年1月に株投資を始めた。

 手始めに、運用に成功して巨万の富を得たユーチューバーの体験談を参考にした。ネットサーフィンで得た増資情報を信じ、最初に買ったのは運送会社の株。100万ウォンを投じた。数カ月後に新型コロナウイルスによる業績悪化が明るみに出て60%も急落した。

 怖くなったが、各銘柄が軒並み下落した今が買い時と考え、PCR検査キットを製造する会社の株に500万ウォンをつぎ込んだ。翌日に20%上昇し、自信をつけた。ネット空間にあふれる企業情報を頼りに、投資先を海外の株式にも広げる。ビギナーだが、この1年間で差し引き約800万ウォンの利益を得た。今は急成長が見込める米国のゲーム関連会社に注目している。

 昼の休憩時間は毎日、食堂で一緒になった人たちと株の話で盛り上がるという。ハイリスクハイリターンの株売買を繰り返す職場の同僚は、業務時間に株価の値動きを示すグラフを見つめ続ける。投資資金をすべて失った知人もいる。それでも、株をやめるつもりはない。政府の働き方改革で、今年からは労働時間の上限を週52時間に制限する制度が中小企業にも適用され、「残業代も期待できず、他に頼れるものがない」とこぼす。

若い世代の株取引、何のため?

 株にのめり込む若者は、厳しい受験競争をくぐり抜け、ソウルの有名大学から財閥系企業に就職した「勝ち組」も例外ではない。午前9時に取引が始まると、若手社員たちが一斉にトイレに駆け込むといった話題を、多くのメディアが取り上げた。業務時間に株売買をするためだが、上司も渋々、黙認しているという。

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2021年1月6日、ソウルの韓国取引所にある電光掲示板には、「祝 KOSPI(韓国総合株価指数)3000突破」のメッセージが映し出された=東亜日報提供

 「東学アリ」。彼ら20~3…

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