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 首都圏4都県に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が続く関西や東海など7府県にも緊急事態宣言が広がって初めての朝を迎えた14日。昨年の宣言時とは異なり、多くの通勤・通学客らが行き交う風景はこれまでと大きく変わらない。感染への不安や、感染拡大に対する「慣れ」を心配する声がもれた。

 14日朝、宇都宮市のJR宇都宮駅は通勤や通学の人がいつも通り行き交い、宣言が出る前と大きな違いは見られなかった。

 東北新幹線で東京に向かう宇都宮市のコンサルタント男性(49)は「年始の打ち合わせで、どうしても対面でなければいけない。打ち合わせが終わったら、とんぼ返りします」。

 新人研修のため東京のオフィスに向かう宇都宮市の会社員斎藤賢一さん(50)は「新人が大阪から集まっているので行かないわけにもいかない。電車も人が多くて不安。在宅勤務を増やそうと思うが、個人の努力でどこまで効果があるのか」ともらした。昨年の緊急事態宣言時と比べると東京の緊張感が緩んでいるように感じるという。

 在来線で通学している那須塩原市の高校2年の中里翔さん(17)は「宣言が出ても電車の混雑は変わらなかった。マスク着用や手洗い消毒以外、できることがない。1人の努力だけではどうしようもないのでは」と顔を曇らせた。埼玉県幸手市から通学する高校2年岡島朝陽(あさひ)さん(17)も「以前と混雑は変わらない。この状況が毎日続くのは怖いです」と不安そうだった。

 緊急事態宣言への追加が発表されたのは13日。関東での追加対象は栃木県だけだ。宇都宮市の男性会社員(68)は「年末年始は人が動くことが分かっていたはずなのに、宣言の発表が遅すぎる」と憤った。「人混みを避けて手洗いやマスク着用を徹底する以外に、できることはないのかな」

 栃木市に住む40代の女性派遣社員は70代の父親と同居している。「栃木は頑張っていたイメージだが、そうもいかなくなってきて残念。親の健康が心配だ。念には念を入れて、家の中でもマスクを着けようと思う」と話した。

 足利市の居酒屋店主(33)は県の要請に従い、午後8時までの営業時間短縮に従う予定という。「周りから見張られていると聞くし、店を開けることはできないと思う。補償(協力金)は最高でも1日6万円。それはありがたいけれど、僕らは生活のために営業している。罰金の話ばかり先に耳に入ってきて、政治家にバカにされているようで」と憤懣(ふんまん)やるかたない様子だった。(平賀拓史、根岸敦生

 JR大阪駅(大阪市北区)は14日朝、多くの通勤客が足早に勤務先に向かっていた。

 大阪府吹田市の男性会社員(29)は勤務先がテレワークを推奨するなか、会社の営業車で顧客回りをするために出勤するという。「営業先では社外の人間の出入りが禁止されていることもあり、仕事はやりづらくなる。営業は結局数字で評価される。テレワークで資料作りばかりやっているわけにもいきません」

 大阪市の男性(28)が勤める保育施設には、「子どもの世話とテレワークの両立はできない」と開所を求める声が寄せられ、運営を続けているという。教室を噴霧器で消毒し、子どもがおもちゃに触れるたびに職員が除菌シートで拭くなど、感染予防に神経を使う。負担は大きいが、「必要とされている以上、それに応えたい」と話した。

 子育て世代の人々は、子の感染リスクを気にかけながら働き続ける。

 大阪市北区に住むアパレル会社勤務の女性(42)は小学3年の長女(9)を送り出した後、兵庫県内の百貨店の店頭に立つ。前回4月に緊急事態宣言が出た時は一斉休業となったが、今回は百貨店も開いている。「店に出たところで、どれだけ客が来るかはわからない。売り上げが低くなるのも不安だけど、客が多いと緊急事態宣言が長引きそうでまた不安」と話す。

 小学校は前回は一斉休校したが、今回は通常通り。「これ以上学習が遅れるのは反対だから授業はありがたいけど、大人を経由して無症状のまま静かに学校で感染が広がっていそう。こまめな消毒、1人ランチを心がけて家にウイルスを持ち帰らないようにします」

 今回宣言が出た愛知や福岡、栃木の各市街地でも、朝の通勤時に人出の大幅な減少はみられなかった。(河野光汰、山根久美子)

対応に追われる飲食店

 13日、2度目の緊急事態宣言が出された関西地域。小売りや飲食店などは対応に追われ、営業時間の変更も相次いでいる。

 百貨店や商業施設の多くは売り場より長く開けているレストランフロアも含め、午後8時までで営業を終了。高島屋は、大阪店や京都店のショップフロアの営業時間を1時間短縮し、午後7時までとする。広報担当者は「お客様と従業員の安全を考えた」と話す。

 飲食チェーンは苦肉の策として、午後8時以降も持ち帰りに対応する。「餃子(ギョーザ)の王将」や「ミスタードーナツ」は自治体の要請に応じて営業時間を短縮する方向。店内飲食の終了後も持ち帰りサービスは続ける。

 焼き鳥チェーンの鳥貴族も時短要請には応じる方針だ。ただ持ち帰りの品数が限られるうえ、夜中心のために午後8時閉店だと通常の半分程度の時間しか営業できないことになる。同社の店舗はほとんどが関西や東海、関東など宣言対象の都市部にあり、売り上げの落ち込みは避けられない。

 外食チェーンの担当者の一人は、「感染者がずるずる増えても悪影響が広がるだけ。持ち帰りやデリバリーの販促を急ピッチで進めて対策する」。

 一方でスーパーやコンビニは、家庭での「巣ごもり」需要に対応しようと、従来通りの営業を維持するケースが多い。

 ライフコーポレーションや平和堂などスーパー各社は、基本的に営業時間の短縮はしない予定。昨春の緊急事態宣言の期間中は臨時休業や時短営業にする店もあったが、方針を変えた。

 今回は昨春の需要拡大を踏まえ、商品の発注を増やす動きもある。ライフは品薄が続いたパスタや冷凍食品などについて、「1週間分ほど積み増して用意している」(広報)という。混雑緩和のため、大阪、兵庫、京都、奈良の店舗では16日のチラシ配布を中止する。(加茂謙吾、栗林史子)

観光地は営業継続

 関西各地の観光地では、感染状況を注視しつつ営業継続をはかる動きが出ている。

 京都では、清水寺(京都市東山区)や金閣寺(北区)は前回宣言時と同様に、拝観停止の予定は現在はない。参拝者が減っており、密集を避けられるとみている。ただ、京都市の観光協会などと市内の寺社が連携して今月9日~3月18日に予定していた非公開文化財の特別公開事業は、8日に延期が発表された。混雑を避けるための判断という。

 世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)は14日以降も、通常通り午前9時から午後4時まで営業を続ける。昨年の緊急事態宣言では休業したが、6月15日から営業を全面再開。大天守の最上階は100人未満、といった独自の基準を設けて客が密集しないよう対策をとってきた。例年なら冬場の平日でも1500人ほどいた来場者は、12日は101人と混雑にはほど遠い状況だ。担当者は「市民らが自ら観光を控えているからではないでしょうか」。

 一方、兵庫県豊岡市の城崎温泉の外湯を管理運営する城崎町湯島財産区(管理者・中貝宗治市長)は、20日ごろまでに営業方針を決める見込みだ。城崎温泉では、昨年の緊急事態宣言下では旅館協同組合に加盟する75施設が一斉休業に踏み切った。だが今はかき入れ時のカニの季節。多くの旅館や土産物店は苦しいながらも営業を続ける見込みだ。担当者は「国の方針には従うべきだが、お客さんへのサービスもおろそかにできない。悩みどころです」と話す。(高井里佳子、青瀬健)