私は、終末期のがん患者が過ごすホスピスの緩和ケア医であり、同時に、転移したがんを抱え抗がん剤治療を続ける現役の患者でもあります。緩和ケア医として15年の経験を持ち、がんを患う前は、がん患者や家族の思いに応えることが出来ている実感がありました。しかし、それは幻想でした。がん患者のつらさ、苦しさは想像を超えていました。
これから患者目線で、あるいは医者として見た患者さんの行動や言葉から、がんになっても前向きに生きていくために必要なことはなにかをお伝えしようと思います。
2018年6月、大量の下血により10万人に1人という珍しいがんジスト(消化管間質腫瘍(しゅよう))が胃に巣くっていると分かりました。青天の霹靂(へきれき)でした。胃の大半を摘出する手術を受け、抗がん剤治療が始まりました。くしゃみをしても走る激痛に耐え、眠れぬ夜とほとんど食べられない日々が続きました。110キロ近くあった体重は60キロ台に減りました。そんなつらい治療に耐えたのに、摘出後わずか10カ月でがんは肝臓へ転移しました。今も3カ月に一度、造影剤CTを撮影し、転移がんの様子を確認します。そのたびに、がんが大きくなってないか、増えてないかと不安な時を過ごしています。
転移を告知された瞬間、「あんなにしんどかった治療に意味がなかった」とうなだれ、それから1週間どん底の気分を味わいました。人生最大の落ち込みでした。
がん患者になれば、誰しも、あ…
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朝日新聞社会部