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 写真家土門拳(1909~90)の出身地の山形県酒田市が主催する写真コンテスト「土門拳文化賞」の奨励賞に、和歌山市の写真愛好家藤吉修忠さん(81)が選ばれた。沖縄戦の傷痕から漂う「鬼哭(きこく)」に耳を傾けた作品が評価された。

 26回目の文化賞には全国から138人(3861枚)の応募があった。藤吉さんの「沈黙の声」は、住民が強制集団死(集団自決)に追いこまれたチビチリガマ(沖縄県読谷村)など沖縄の戦跡をめぐった軌跡を30枚組みでまとめた。

 沖縄との出会いは1993年、2泊3日の観光旅行だった。最初に訪ねた「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)で、戦場に動員された女子学生の歴史を初めて知った。同行した妻(69)は泣き、「彼女たちは本当に死ななければならなかったの」と言った。

 写真を始めたのは会社勤めを終えて61歳から。妻の言葉にずっと引っかかっているという藤吉さんは、証言録を読んで沖縄戦を学びつつ、2014年からは年に2回、ガマ(洞窟)や摩文仁の丘といった戦跡をまわって撮影を重ねてきた。

 そうして心に湧きあがってきたのは「憤」という。ある人は言う。「彼女たちは無駄死にではなかった。お国のために一生懸命に戦ったのだから」。藤吉さんは「そうだろうか」と考える。生きて恋をして仕事をして……という生の無限の可能性を奪ったのは誰か。死を強いた側の責任はどうなっているのか。もはや反論できない犠牲者の無念を作品のタイトルに込めた。(下地毅)

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