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 旧優生保護法(1948~96年)の下で不妊手術を強制されたのは違法だとして、札幌市の小島喜久夫さん(79)が全国で初めて実名を公表して国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁(広瀬孝裁判長)は15日、小島さんの請求を棄却した。

 同法をめぐっては全国の9地裁・支部で計25人が提訴し、判決は4例目。仙台、東京、大阪の3地裁が2019~20年、いずれも原告の訴えを退ける判決を出した。強制不妊手術は違法などとされたが、手術から20年以上が経過しており、不法行為から20年が過ぎると損害賠償の請求権が消える「除斥期間」が壁になった。

 小島さんは18年5月に提訴した。子どもを産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ・ライツ)が侵害されたとして、同法は幸福追求権を保障する憲法13条や法の下の平等を定めた14条などに反すると主張。国は補償など被害回復のための救済措置を怠ったと訴えた。

 訴状などによると、小島さんは生後間もなく北海道石狩市の農家に引き取られ、複雑な家庭環境のなか、けんかを繰り返すなど生活が荒れた。19歳だった1960年ごろ、自宅で警察官に手錠をかけられ、札幌市の精神科病院に連れていかれた。診断がないまま、「精神分裂病(のちに統合失調症と改称)」として入院させられ、不妊手術を強制されたとされる。

 原告側は、除斥期間の起算点は同法での強制不妊手術をめぐり全国で初めて宮城県の女性が提訴した2018年1月だと主張。これが認められなくても、ハンセン病患者への不妊手術をめぐり「非人道的な取り扱い」と言及したハンセン病国賠訴訟の熊本地裁判決(01年5月)までの三つの時点を示し、いずれも20年は経過していないとした。

 さらに、除斥期間を適用すること自体が著しく正義や公平の理念に反すると主張し、適用は制限されるべきだと訴えた。

 一方、国側は除斥期間の起算点は手術を受けた時点とし、損害賠償の請求権はすでに消滅していると主張。国家賠償法とは別の救済措置をとることは必要不可欠であるのが明白だったとはいえない、などと反論していた。

 同法をめぐっては19年4月、被害者に一律320万円を支給する一時金支給法が成立した。当時の安倍晋三首相は「政府としても、旧優生保護法を執行していた立場から、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわび申し上げます」との談話を出したが、問題を放置した政府の責任には言及しなかった。(磯部征紀)