メキシコの前国防相、不起訴に 麻薬密売の証拠「なし」

サンパウロ=岡田玄
[PR]

 メキシコのサルバドル・シエンフエゴス前国防相が「麻薬組織のトップ」との疑いがもたれた事件で、メキシコ検察は14日、「犯罪に関わった証拠が見つからなかった」として、訴追しないと発表した。シエンフエゴス前国防相は米国で身柄拘束されながら、メキシコ政府の強い要請で移送された経緯があり、ロペスオブラドール政権への批判が高まる可能性がある。

 シエンフエゴス前国防相は昨年10月、米麻薬取締局(DEA)が米ロサンゼルスで拘束した。ペニャニエト前政権時代、麻薬組織の取り締まりを指揮する立場にありながら、犯罪組織から賄賂を受け取り、麻薬密売を助けるなどしたとされた。米メディアはDEAが「ゴッドファーザー」と呼ばれる犯罪組織のリーダーを追ったところ、シエンフエゴス氏だったと報じた。

 だが、ロペスオブラドール政権は事前の通告がないまま、元高官の身柄が拘束されたことに「主権の侵害だ」と反発。身柄を引き渡すよう求め、米側に対して「メキシコ国内で活動するDEA職員を追放する」などと迫ったという。米側は11月、異例の起訴取り下げを行い、シエンフエゴス前国防相は母国に移送された。

 ロペスオブラドール氏は「メキシコで処罰する」と説明してきたが、検察は不起訴にあたっての発表で、「米当局と本人から資料提供を受け捜査したが、犯罪組織と前国防相の接触は確認できなかった」とした。麻薬組織の保護・援助を目的とした行為や、収賄なども証拠がなかったという。ロペスオブラドール氏は15日朝の定例会見で、「DEAが作り上げた疑惑の捜査を進めないと、検察が確認した」と述べた。

 メキシコでは、麻薬カルテルの影響力が強く、捜査機関や裁判所にも及んでいるとされる。シエンフエゴス前国防相の移送が決まった段階から無処罰となる可能性が指摘されてきたが、実際に不起訴となったことで、政権への批判が高まる可能性がある。(サンパウロ=岡田玄)