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 国の「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場選定の第1段階「文献調査」が昨年11月、北海道寿都町と神恵内村で始まった。2町村は調査と同時に受けられる交付金に期待するが、その配分方法が難題になっている。制度上は交付金を受けられる道や隣接自治体から受け取りを拒否する声が上がっているためだ。(伊沢健司)

 国から交付されるのは「電源立地地域対策交付金」。その原資は、電力会社に課されている電源開発促進税で、この「税」は電気料金に上乗せする形で私たちから徴収されている。

 交付金は、さまざまな発電関連施設の立地を促すため、施設の地元自治体に交付されてきた。原子力発電所だけでなく、水力、地熱などの発電所がつくられる市町村のほか、その隣の市町村(隣接)やその隣の市町村(隣々接)、都道府県に配分される。

 「核のごみ」の最終処分場の場合、第1段階の資料調査などを行う2年間の「文献調査」で最大20億円、第2段階のボーリング調査などを行う4年間の「概要調査」で最大70億円の交付金が、調査が行われる自治体などに出る。発電所の建設前から運転開始までの期間にあたる「初期対策」の枠組みが適用される。

 国から道への通達によると、交付金は「所在市町村」に5割以上が交付される。今回の場合、文献調査が実際に行われる寿都町や神恵内村がこれにあたる。残額は「地域の実情に応じて配分」されるという。

 ただ、最終処分場の文献調査はこの2町村が全国で初。処分場の選定プロセスに伴う交付金の配分の前例はなく、方法がまだ決まっていない。2町村は来年度予算案の編成に向け、交付金の使い道を経済産業省資源エネルギー庁と協議している。

 今後の配分はどうなるのか。鈴木直道知事は昨年12月24日の会見で「文献調査は全国で初めて実施される。(交付金の配分が)そもそもどういう形で実施されるかわからない。国から情報収集をしている」と話した。そして、仮に道にも配分される場合には「私としては交付金を受け取る考えはない」と拒否する方針を示した。

 昨年8月に寿都町が文献調査の応募検討を表明し、その後神恵内村で応募の動きが出ても、鈴木知事は一貫して調査に反対してきた。道は2000年、核のごみを「受け入れ難い」とした条例を制定しているためだ。鈴木知事は「道の考え方については繰り返し国に伝えていく」という。

 隣接自治体はどうか。朝日新聞の取材では、寿都町に隣接する全3町村が受け取らない方針だ。「処分場立地が前提の交付金は受けない」(黒松内町)、「文献調査に反対している」(蘭越町)、「配分の意図が不明」(島牧村)を理由に挙げている。

 一方、神恵内村に隣接する3町村のうち、古平町は「受け取る」と答えた。担当者は「近隣自治体は法律上、文献調査に拒否も同意もできない。風評被害への対応が必要だが、小さな町で原資がなく交付金を使って経済対策を打たざるをえない」と話した。積丹町は「情報を得ていないので判断できない」、泊村は「仮定の話には答えられない」と判断を保留している。

     ◇

 道内にはさまざまな発電関連施設があり、電源立地地域対策交付金は幅広く交付されている。19年度は道と道内94市町村に対し、計28億4444万円が交付された。このうち、北海道電力泊原発の所在・周辺自治体である泊村、岩内町、共和町、神恵内村の4町村への交付金が13億8415万円で5割近くを占めた。

 電源立地地域対策交付金の前身となる交付金は1970年代からあったが、03年に複数の交付金が統合され、公共施設だけでなく観光振興や福祉などにも使えるようになった。自治体から弾力的な運用を望む声があがっていたためだ。

 現在の交付金の使い道は幅広い。経産省によると泊原発の地元自治体では、村道の除排雪(泊村、5057万円)、ごみ収集(岩内町、7990万円)、保健師や保育士らの人件費(神恵内村、2200万円)など、暮らしに密接な事業に充てられた。「共和かかし祭」の運営費(共和町、600万円)など、観光振興も支えている。

 文献調査が始まった寿都町では、片岡春雄町長や調査に賛同する町議が交付金に期待する。

 昨年12月17日の町議会の一般質問で、賛成派の町議は「町民から保育料や給食費の無料化、漁業施設の拡充など多くの要望がある。少子化や人口増につながる目玉施策になる」と発言。さらに「交付金をいろいろな施策に活用できるのではと思い(文献調査に)賛成している。町財政の特効薬として活用できるような使い道をつくっていただきたい」と要望した。片岡町長は「地域の所得を上げたい。産業振興の部分は大事にしたい」と答えた。

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